2021 年 87 巻 4 号 p. 239-250
基腐病は種苗伝染するため,鹿児島県では,2018年に基腐病が確認されて以降,主要産地の苗床で基腐病が発生し,発病圃場が年々増加して問題になっている.
本研究では,まず,基腐病に対する塊根の貯蔵中の発病リスクについて,以下の2点を明らかにした.
①基腐病の発生圃場から株の状態で塊根を収穫して貯蔵すると,貯蔵中に発病が進展し,腐敗塊根が増加する.②基腐病の罹病塊根が貯蔵コンテナ内に1個でも混入すると,隣接する健全塊根の伝染源になる.
次に,基腐病の発生圃場から塊根を採取する場合に,発病リスクの少ない塊根を効率良く確保する技術について,以下の4点を明らかにした.
①塊根は,株基部と藷梗に基腐病の病徴がない株から,外観で無病徴のものを採取すると,貯蔵中の基腐病による腐敗が少なくなる,②また,殺菌剤で塊根の消毒を行う場合,貯蔵前に,洗浄,選別,塊根の切除調整および塊根の消毒を施した結果,貯蔵中の基腐病による腐敗に高い抑制効果が認められた,③基腐病菌の胞子懸濁液を温湯処理した結果,胞子の死滅温度は48°C・10分間と考えられた,④③の結果に基づき,基腐病の発生圃場から採取した塊根に48°C・40分間の蒸気と熱による温度処理を施したところ,萌芽能力も維持しつつ,貯蔵中の基腐病による腐敗に高い抑制効果が認められた.