日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
原著
LED光源を用いたUV-B照射によるイチゴうどんこ病およびイチゴ炭疽病の抑制
内橋 嘉一高野 仁田中 雅也田坂 勝次神頭 武嗣
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 90 巻 1 号 p. 5-13

詳細
抄録

308 nmをピークとするLED光源(UVL308)と,311 nmをピークとするLED光源(UVL311)によるイチゴうどんこ病および炭疽病の発病抑制を検討した.中発生条件の冬期,秋冬期の試験では,UVL308区のうどんこ病防除価はそれぞれ91.9,86.9と高く,UVL311区の74.8,61.0を大きく上回った.一方,多発生条件の春期の試験では防除価はUVL308区で62.4,UVL311区で64.5となり,殺菌剤との併用が必要と考えられた.これらの試験結果を一般化線形混合モデル(GLMM)で解析した結果,UVL308の無照射に対する回帰係数の推定値は-1.82,UVL311では-1.55と発病を抑制する効果が認められた(p<0.01).また,UVL308区は炭疽病に対する発病抑制はあるものの,その程度は低く,UVL311区の発病抑制は判然としなかった.UVL308の波長領域のうち,55.3%が290 nmから310 nmの波長域に含まれたのに対して,UVL311では38.9%にとどまったことが両者の発病抑制の差の要因であると考えられた.さらに,いずれの試験でも葉の傷害などの生育障害は見られなかった.以上のことから,UVL308はイチゴうどんこ病を高度に抑制,炭疽病を抑制し,UVL311はうどんこ病を抑制することが明らかになった.今後,LED光源の特性を活かした波長域の最適化や照射強度の調節により,UV-Bを活用した新たな病害虫同時防除法の開発にこの結果を活用できる.

著者関連情報
© 2024 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top