2025 年 91 巻 4 号 p. 239-247
長野県では2017年にプロクロラズ耐性ばか苗病菌が発生し,薬剤の変更等の対策をとっている.主要な薬剤に対する感受性を把握するため,プロクロラズ(以下,Pr),ペフラゾエート(以下,Pf),トリフルミゾール(以下,Tr),イプコナゾール(以下,Ip),およびベノミル(以下,Bn)に対するMIC値(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)の頻度分布,交差耐性および防除効果を検討した.供試菌株は2017~2021年に県内で分離され,病原性を有する110菌株とした.各薬剤に対するMIC値の頻度分布はPrでピーク12.5 ppm,範囲0.1~25 ppm,Pfでピーク3.13 ppm,範囲0.19~25 ppm,Trでピーク12.5 ppm,範囲0.1~>50 ppm,Ipでピーク0.39 ppm,範囲0.19~3.13 ppmであった.Bnは<5 ppm,>1000 ppmの二峰性となった.PfとPrおよびIpとTrのMIC値間にはそれぞれ正の相関があり,Pr,Pf,Tr,IpとBnのMIC値間にはそれぞれ負の相関があった.MIC値の異なる34菌株の接種籾を用いた防除試験では,いずれも多~甚発生条件においてオキソリニック酸・Pr水和剤の防除価は0~100,チウラム・Pf水和剤の防除価は71.9~100,Tr乳剤の防除価は0~99であったが,銅・フルジオキソニル・Pf水和剤およびIp・銅水和剤は全ての菌株に対して高い防除効果を示した.