日本植物病理学会報
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李黒斑病細菌の研究
鍬塚 喜久治
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1921 年 1 巻 4 号 p. 12-19

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抄録
李の黒斑病細菌(Pseudomonas pruni E. F. Smith)は我國に於ても李、桃等の葉に穿孔病を起すのみならず、桃の果實に七月頃發生して褐色裂傷状の病害を起すものなり。
本細菌は又莖を侵すものにして特に李に最も多し、潰瘍状の病患部を生じ、細菌は其病組織内に越冬して翌春傳播の中心となるものなり。即ち十月下旬桃の枝より、或は三月中旬發芽前の李枝より分離せる菌も夏季果實より分離せるものと同様に感染發病する事を確め得たり。
本細菌の寄主として今日迄記載されたる植物は、アンズ、ズバイモモ、モモ、スモモ、スミセイヤウミザクラの五種なりき。大正八年、東京帝國大學農學部植物園に於て十六屬、四十餘種の薔薇科植物に就て接種試驗を行ひたる結果によれば上記の五種のみならず、スモモ屬の植物には殆ど總てに感染し得るものの如し即ち更にイヌザクラ、チヤウヂザクラ、ヤマザクラ、ヒガンザクラ、ニハウメ、ウメ、コウメ、ブンゴウメ、ヨネモモ、等のスモモ屬植物に陽性の結果を得たり。
スモモ屬以外の植物にては單にナナカマドの莖に感染(組織内に注射接種の場合)し小腫起物を形成せり。
土壤濕度の多少と葉部感染との關係に就ては更に實驗を重ぬべきも、第一囘試驗の結果によれば土壌濕度の高き場合は比較的乾燥せる場合よりも、葉に於ける本菌感染の度、即ち穿孔を生ずる割合著しく大なり。
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