日本植物病理学会報
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莱〓の萎縮病
石山 信一三澤 正生
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1942 年 12 巻 2-4 号 p. 116-130

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抄録

本報告は昭和14年秋靜岡市吉田,聖一色兩部落に發生した莱〓の萎縮病の病徴,病原の性質,昆虫の媒介,寄主關係に就き研究した結果を記載したもので,要約すれば次の通りである。
1. 靜岡市附近では昭和14, 15兩年の秋,萎縮病に因る莱〓の被害顯著で,圃場によつては,殆んど全滅せる所もあつた。
2. 罹病莱〓は著しいものでは,萎縮し,地下部の發育不良となる。葉に於ては,葉脈透明,捲縮,斑紋,畸形,脈側緑帶を生じ,往々皺褶,葉脈糸状突起等を生ずる。莢,花梗にあつては,表面に斑紋を生ずる。罹病莱〓の葉組織にはX-體を未だ認め得ない。
3. 本萎縮病は罹病植物搾汁を以て,カーボランダムを用ひ,莱〓苗に接種すれば容易に傳染せしめられる。
4. 本バイラスは罹病莱〓の根,葉,花梗,莢,未熟種子に存在する。種子に於ては,乳熟程度迄はバイラスは活性であるが,完熟すると不活性になるものの如くである。
5. 本バイラスは70℃で10分間加熱し,又は1: 15000に稀釋すれば不活性となる。又バーケフエルド濾過管(松風工業製)V・N・Wの何れをも通過するを認めた。
6. 搾汁中に於ける本バイラスの感染力保存可能時間は23日,乾燥葉中に於ける感染力保存可能時間は39日であつた。
7. モモノアカアブラムシ(Myzus persicae SULZ.),ニセダイコンアブラムシ(Rhopalosiphum pseudobrassicae DAVIS)の兩種共本バイラスを媒介する。殊にモモノアカアブラムシに依る傳染率は高い。
8. 病汁接種に依り感受性なるを示した植物は次の通りである。(十字科)廿日大根.早生菜種,壬生菜,高菜,白菜,體菜,山東菜,小蕪,聖護院蕪,あらせいとう,(藜科)菠薐草(荳科)碗豆(茄科)蕃椒非感受性を示した植物は次の通りである。(十字科)洋種菜種,甘藍(荳科)蠶豆,(胡蘆科)胡瓜(藜科)食用ビート(菊科)〓蒿(茄科)トマト,煙草(Nicotiana tabacum, N, glutinosa)
9. 本實驗に供した菜〓萎縮病バイラスは從來發表されて居る各種の十字科蔬菜のモザイク病バイラスの記載と比較するに,良く一致するものを見ず,未報告のものと考へられる。

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