日本植物病理学会報
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軟腐病菌(Erwinia carotovora)の系統に関する研究
II. 鞭毛抗原及び菌体抗原の熱による不活性化について
後藤 正夫岡部 徳夫
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1957 年 22 巻 4-5 号 p. 268-273

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抄録

1. E. carotovoraの鞭毛抗原及び菌体抗原の熱による不活性化の問題を研究した。
2. 12血清型の代表的菌株を用いて行つた実験では鞭毛抗原は58~78℃, 10分の加熱によつて不活性化し,抗原性を喪失する。この温度は血清型によつて一定し,±1℃の範囲内で再現し得る。
3. 鞭毛抗原は普通2種以上の因子抗原から構成されているが,血清型によつては因子抗原の種類によつて不活性化温度を異にする。
4. K血清型(Chr. 1菌株)の鞭毛抗原はk, a,及びc抗原から構成されている。a抗原は単独で存在する場合は63℃で不活性化するがk抗原(不活性化温度78℃)と共存する場合には75℃で不活性化する。抗原の組合せ如何によつて不活性化温度が異る例として注目に価する。
5. 無鞭毛菌の一部の菌体抗原(P8株のc1, c3)は55℃ 10分の加熱によつて抗原性を失う。
6. 100℃, 1時間の加熱死菌の注射によつて得たO血清の菌体凝集反応は,生菌注射によつて得たOH血清の菌体凝集反応に比べて一般に反応菌株の数が減少する。しかしD血清型はこの逆でD及びA血清型の菌体抗原と広く反応する。即ちこの血清型では類属凝集反応が耐熱性の菌体抗原によつて起り,他のE. carotovoraの血清型と逆の関係にある。

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