日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
ホワイトクローバ モザイク ウイルスに関する研究
飯塚 典男飯田 格
著者情報
ジャーナル フリー

1965 年 30 巻 1 号 p. 46-53

詳細
抄録

1958年, 盛岡で罹病ラジノクローバから1つのウイルスを分離した。このウイルスは汁液接種で容易に伝搬され, レンゲ, ナタマメ, クロタラリヤ, スイートピー, インゲン, エンドウ, アルサイククローバ, クリムソンクローバ, レッドクローバ, サブクローバ, ソラマメ, コモンベッチ, ヘァリーベッチ, ササゲなどを全身的に侵した。フジマメ, アルファルファ, キバナルーピン, アズキ, ヤエナリ, スイカ, キウリ, マルバマアサガオ, キンギョソウ, トマト, ダチュラ, フィザーリス, ペチュニア, Nicotiana rustica, N. sylvestris などの接種葉からは本ウイルスが回収できた。これらのうち, ヤエナリおよびスイカの接種葉には常に壊死斑点を生じた。また, タバコ, グルチノーザ, ビート, ホーレンソウ, センニチコウおよび Chenopodium amaranticola には感染しなかつた。
本ウイルスは汁液のほか低率ながらマメダオシで伝搬された。しかしマメヒゲナガアブラムシ, マメアブラムシおよびモモアカアブラムシでは伝搬されなかつた。耐熱性, 70~75℃10分, 耐希釈性は10万~100万倍であり, 耐保存性は25℃で60~90日, 室温 (18~20℃) では91日以上であつた。Dip 法による電子顕微鏡観察で長さ約450mμ前後のひも状粒子を認めた。罹病植物の表皮細胞内には特異な隅体 (Corner inclusion body) が観察され, 罹病エンドウの超薄切片の観察によつて, 細胞内にウイルスの集団らしきものを認めた。本ウイルスはカナダの White clover mosaic virus 抗血清との間に明らかな沈降反応を示した。
寄生範囲, 病徴, 伝搬方法, 物理的性質, ウイルス粒子の形態および血清反応などから考察して, 本ウイルスは, アメリカ, ニュージーランドおよびヨーロッパ各地で報告された White clover mosaic virus のグループに属すると同定した。

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top