日本植物病理学会報
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日本に分布するカンキツ潰瘍病菌とそのバクテリオファージの性質
脇本 哲
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1967 年 33 巻 5 号 p. 301-310

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抄録
日本の各地から集めた罹病葉から41株のカンキツ潰瘍菌と42株のカンキツ潰瘍病菌ファージを分離した。ファージは血清学的な性質と形態からCP1とCP2の2グループに大別することができる。日本に広く分布しているCP1は68mμの球形の頭部と160×15mμの尾部を持つたオタマジャクシ型の粒子であるのに対し,CP2は直径70mμの多角体粒子で尾部は認められない。これらのファージの活性は共に45°C以上の温度で不安定であり,55°C, 10分でほぼ完全に不活性化される。CP1aファージは形態,寄主範囲その他の諸性質においてはCP1と同じであるが,ただ,血清アルブミンの添加によつて溶菌斑形成率が著しく高められる系統である。
日本に分布するカンキツ潰瘍病菌はCP1とCP2に対する感受性によつて次の3 lysotypesに分類できる。
1. CP1に侵されるがCP2に抵抗性…………Lysotype A
2. CP2に侵されるがCP1に抵抗性…………B
3. CP1, CP2両ファージに抵抗性…………C
これらの内,AとBとが日本には広く分布している。Lysotype Aに属するものはマンニットを分解して酸を生ずるが,Bに属するものは酸を生じない。ただし,これには若干の例外が認められる。
またカソキツ潰瘍病菌には採取地または寄主品種の差によつて寄生性に差異は認められず,病原性とファージ感受性との間にも相関は認められない。
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