日本植物病理学会報
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ジャガイモ葉巻病ウイルス感染植物体内の篩部壊死について
田中 智塩田 弘行
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1973 年 39 巻 1 号 p. 61-66_2

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抄録

1. ジャガイモ葉巻病ウイルスを接種したPhysalis floridona Rydb.およびDatura stramonium L.の幼植物から健全モモアカアブラムシによってウイルスの回収試験を行なった。その結果,上葉,接種葉および下葉からウイルスが回収されはじめたのはそれぞれ,接種後2~4, 0~2および6~8日間飼育した区であった。ウイルスの回収率は接種2日以後は上葉が他の部位より高かった。
2. これら接種植物の病徴は,上葉では接種後6~7日目に脈間退緑がみられはじめたが,接種葉および下葉では10日目以後にならないと病徴がみられなかった。
3. 電子顕微鏡によって接種植物の葉の主脈について,その篩部壊死を観察した。その結果,篩部壊死は接種後5日目の上葉および接種葉ですでに認められ,10日目には5日目の約3倍に増加した。
4. 壊死細胞は細胞質の凝固,崩解したもの(DC)と細胞中に網目状および繊維状を示すもの(NC)との2つの型が観察された。そのうち,DCは接種後間もない植物において,1本の植物体では上葉が下葉より多かった。
5. ウイルス粒子はDCを示す細胞および網目状を示す細胞中に観察されたが,繊維状を示す細胞中には認められなかった。
以上の結果から,PLRVに感染した植物においては,まずウイルスが増殖し,そののち篩部壊死(内部病徴)が生じ,つづいて外部病徴があらわれてくるものと考えられる。

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