日本植物病理学会報
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菌類に於ける突然變異的現象に關する實驗的研究(豫報) IX
擬溶菌現象の生物學的性状に就て
廣江(松浦) 勇
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1935 年 4 巻 3-4 号 p. 178-190

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抄録

本報文に於ては稻胡麻葉枯病原菌の擬溶菌現象發現に及ほす温度並に培養成分の影響,擬溶菌現象擴大速度並に本現象の發現初期並に終期を時間的に測定せる研究結果を報告せり。
本現象は20°~36℃に於て發現し, 23°~28℃就中24℃前後に於て最良の發現をなす。16℃以下に於ては全く本現象を發現せず。
本現象の發現最も良好なるは2%蔗糖加馬鈴薯煎汁寒天培養基にして,之に次ぐは稻藁煎汁寒天,アスパラギン加合成寒天,ペプトン加合成寒天,玉蜀黍粉煎汁寒天等の各培養基にして,乾杏煎汁寒天培養基に於ては殆ど認め難く,三好氏處方醤油寒天並に齋藤氏處方醤油寒天培養基上に於ては發現せず。
本現象は23℃に於て1時間0.4°6~5.106mm2,平均3.511mm2の擴大速度を示す。
本現象は1分間0.083~0.5μ,平均1分間0.291μの速度を以て増大す。
本現象は32℃の恒温に於ては早きは54時間,遲きは74時間,平均64時間目に發現し, 23℃の恒温に於ては早きは49時間,遲きは69時間,平均59時間目に發現す。
本現象は早きは培養後72時間,遲きは95時間目に新生菌絲之を被ひ,終期に達し,本現象を全く認め得ざるに至るものなり。即ち本現象發現後平均20時間にして終期に達するものなれば注意して發育状態を觀察せざれば遂に本現象を認め得ざるに至ることあり。

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