日本植物病理学会報
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ナシ黒斑病菌(Alternaria alternata Japanese pear pathotype)より単離された宿主特異的毒素(AK毒素IおよびII)の生物活性
尾谷 浩甲元 啓介西村 正暘中島 忠一上野 民夫深海 浩
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1985 年 51 巻 3 号 p. 285-293

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抄録

ナシ黒斑病菌(Alternaria alternata Japanse pear pathotype)より単離,構造決定されたAK毒素IおよびIIのナシ組織に対する活性を検討した。AK毒素IおよびIIは,感受性品種の二十世紀ナシには,それぞれ5×10-9M, 10-7Mという極めて低濃度まで壊死形成やK+の異常漏出を誘起した。一方,抵抗性品種の長十郎ナシには,両毒素とも10-4Mの高濃度でもまったく毒性を示さなかった。さらに,各種ナシ品種を用いて毒素活性を調べると,両毒素とも黒斑病感受性の品種にのみ強い毒性を発揮し,顕著な宿主特異性が認められた。一方,AK毒素IやIIを処理した感受性ナシ葉では,毒素処理による特徴的な細胞壁の変性や原形質膜の陥入が観察された。また,病原性失活菌の胞子にAK毒素IまたはIIを加えてナシ葉に接種すると,感受性品種にのみ失活菌の感染が誘発された。以上の結果は,既報の粗毒素を用いた結果とよく一致し,AK毒素IおよびIIは,ナシ黒斑病菌の宿主特異的毒素であることが確認された。

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