1993 年 59 巻 6 号 p. 619-625
TMVが感染して局在化したキュウリ子葉にCGMMVあるいはCMVを2次接種し,それぞれのウイルスの分布状態を蛍光抗体法により観察したところ, 2次接種ウイルスはいずれもTMVの感染組織以外の細胞では多量に増殖し, TMVの局在化部位への感染は認められなかった。 TMVが局在化したキュウリ子葉に放射性同位元素で標識したアミノ酸,グルコースおよびウリジンを胚軸より取り込ませたところ, TMVの局在化部位にはこれら物質の移行が認められなかった。蛍光色素を細胞内にマイクロインジェクションし,色素の細胞間移行を観察したところ,非感染組織においては色素注入部位のうち約8割の部位でその移行が認められたが, TMV感染組織においてはその値が低く(約3割),強い移行阻害が認められた。さらにTMV局在化部位では,光合成能力(14CO2の取込み)は健全組織と同様に保持されていたが,その光合成産物の転流が強く阻害されていた。これらのことから,キュウリ子葉におけるTMVの局所化には細胞のシンプラズム輸送の阻害が関与していることが示唆された。