抄録
ブロムモザイクウイルス(BMV) ATCC66株の感染性in vitro RNAを転写できるcDNAクローン(KU1株)の全塩基配列を決定し,BMVロシア株と比較した。BMV RNA1, 2, 3それぞれにおけるKU1株とロシア株の間での相同性は97%以上で,transitionタイプの置換がtransversionタイプの置換よりも多かった。Sindbis様植物RNAウイルスに保存されている3つの領域でのアミノ酸変異のほとんどは類似アミノ酸への変換であった。RNA1と3の5′端非翻訳領域の塩基配列は両株間で完全に同じであったが,RNA2では7つの塩基が異なっていた。いずれのRNAの3′端の塩基配列の変異も想定される2次構造に影響を与えないものであった。KU1株,ATCC66株ともに外被タンパク質遺伝子の5′端非翻訳領域において2つの隣接したアデニン塩基が欠失していた。RNA3のシスロトン間領域に存在するオリゴ(A)配列のアデニンの数はATCC66株では一定ではなく,KU1株のRNA3のcDNAでグアニン塩基が1個含まれていたのに対して,ATCC66株のRNA3では2個以上のグアニン塩基が認められた。