抄録
1993年秋,愛知県渥美半島一帯で栽培されているダイジョ(大薯,Dioscorea alata L.)に,わが国未記録の斑点性ないし葉枯性病害が発見され,さらに翌1994年秋,同一病害が鹿児島,宮崎両県下でも広く発生していることが認められた。病斑部から,Botrytis属菌が分離され,培養上の菌核を野外越冬させBotryotinia属の子のう盤を得た。分生子・子のう胞子分離株はそれぞれ同様の性状を示し,ダイジョとトマトで病原性を確認した。既往のBotryotinia属菌との形態比較から,本菌をBotryotinia fuckeliana (de Bary) Whetzel(アナモルフ:Botrytis cinerea Persoon: Fries)と同定し,病名をヤマイモ灰色かび病と提案した(岸・小林,1995)。日本有用植物病名目録では,ダイジョは作物名ヤマイモの中に含まれるからである。