心身医学
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ラットにおける自律神経失調症のテスト方法とNeurotropinその他薬物の作用
喜多 富太郎秦 多恵子伊藤 栄次浪松 昭夫
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1983 年 23 巻 1 号 p. 61-68

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抄録
ヒトの血圧を対象に行われている自律神経機能検査法の1つであるmecholyl testを実験動物ラットに適用した。1) Mecholyl筋注後のnormalラットの血圧の平均的な回復曲線は人の場合とよく似た推移を示した。諏訪法で算出したメコリル係数のバラツキも小さく, 再現性が高い。これよりmecholyl testをラットに応用することが可能であると考えられる。2) SART stressラットについてmecholyl testを行うと, 血圧回復のrebound現象が非常に小さく, またindexはnormalラットより有意に小さかった。すなわちSART stressラットはnormalラットのnormoreactor型に比して, sympathetic hyporeactor型であると判定できよう。3) SART stressラットにおけるmecholyl indexの低下は神経鎮静剤neurotropinの前投与で阻止された。4) 6-hydroxydopa投与によりadrenergic neuronを化学的除神経したラットでのmecholyl testの成績はSART stressラットでのそれと類似していた。このことはSART stressラットでは交感神経緊張がnormalラットのそれより低下の方向にあることを一層確かとするものである。5) また別の検査方法としてaschner氏眼球圧迫試験をマウスに行ったところ, ヒトと同様に徐脈現象が認められた。SART stressマウスにこの試験を行った結果, 徐脈の度合はnormalマウスのそれより大であり, 副交感神経緊張亢進が示唆された。以上1)〜5)の成績よりSARTストレス動物は身体全体としてvagotonia型の自律神経失調症であることが確かめられた。
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© 1983 一般社団法人 日本心身医学会
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