心身医学
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巻頭言
第64回日本心身医学会総会ならびに学術講演会
リレー講演:心身医学のあり方に関するリレー講演会
  • ―司会のことばに代えて―
    福土 審, 久住 一郎
    2024 年 64 巻 4 号 p. 317
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー
  • 吉内 一浩
    2024 年 64 巻 4 号 p. 318-321
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    心身医学の重要性は,本誌の読者の先生方には明白だが,他の領域では,まだまだ普及していないように感じる.心身症の存在自体が疑問視された時代もあり,大学院時代に,ストレスによるバセドウ病の発症と経過への影響を研究し,ガイドラインにも収載された.若手の先生方には,自らエビデンスを構築する姿勢を応援したく,若手ワーキンググループなど,本学会としても,システムを構築中である.また,心身医学を他の分野に普及させるには,他科との連携も重要であり,例えば,他科とのリエゾン活動を通じて,心身医学の有用性を示し,研究成果も発表してきた.さらなる発展を目指すためには,医学以外の専門家との学際的な研究も重要であると考えられる.心身医学はその点に関して親和性があると考えられる.研究する機会がなかったり,指導を受ける機会がなかったりする若手の先生方には,学会場や懇親会で先輩に相談することを勧めたい.未来の医療は,若手の先生方の双肩にかかっており,筆者も積極的にサポートしたい.

  • 蓮尾 英明, 島津 真理子, 秋山 泰士, 岡本 敬司, 水野 泰行, 西山 順滋
    2024 年 64 巻 4 号 p. 322-326
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    心身医学は独自性のある医学である.一方,医療制度・社会的偏見・エビデンス不足といったさまざまな課題を前に,この魅力をより深く,個人,社会へとマルチレベルに啓発するために,われわれ心身医学を専門とする医療者は何をすべきであろうか.

    独自性を変えたらそれはすでに独自性ではないが,今,未来で医学会に魅力的に映るように独自性に萌芽した多様性も大切にしたい.緩和医療,総合診療といった心身医学の独自性が広がった領域から,その心身医学萌芽を取り入れてもよいかもしれない.今回,本学の腹案である「器質的疾患(心身症)診療の強化案」「プライマリー心理療法処方案」「心身医学関連医学からの心身医学萌芽の取り入れ案」を紹介する.そのうえで,各個人が譲れない独自性を再認識して,それに萌芽した多様性を心身医学に取り入れていただけたらと考えている.

  • ―ドイツと米国の心身医学の発展から学ぶ―
    河合 啓介
    2024 年 64 巻 4 号 p. 327-333
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    本稿は,ドイツと米国の心身医学における治療者育成やストレス関連疾患への対応を日本の状況と比較し,将来の方向性を探ることを目的にしている.ドイツでは各大学に心身医学の講座が設けられているが,さらに,心身医学の医局に所属していない医師は医師会による心身症専門医養成プログラムを受けることができ,専門医は日本の7倍に相当する診療報酬を得ている.米国では国家レベルでメンタルヘルス問題に対処し,社会的,環境的,政治的解決策の必要性が強調されている.日本の特徴は,多様な診療科の医師が日本心身医学会に加盟していることである.今後は,各科に共通した部分と個別化した部分のbio-psycho-socialな診断と治療を強化することが課題である.これらを踏まえ心身症の定義を明確にし,国民への理解を深めることが重要である.

シンポジウム:心身医学と医学教育
  • 川﨑 康弘, 端詰 勝敬
    2024 年 64 巻 4 号 p. 334
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー
  • 網谷 真理恵
    2024 年 64 巻 4 号 p. 335-340
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    近年医学教育の標準化が進み,各大学で医学教育改革が推進されている.そのような背景の中,令和4(2022)年度に医学教育モデル・コア・カリキュラムが改訂された.これらの改訂は,将来の医師が患者の心理的・社会的側面を理解し介入するスキルを習得する必要性を強調している.この転換は,医療は身体的な治療だけにとどまらず,効果的な疾病管理と患者の満足度を高めるために重要な,健康の心理社会的側面への取り組みが必要であるという,より広範な理解を反映したものである.

    各大学における問題点は,これらの内容を「誰が」「どのように」教えるかということであり,現状として指導者不足が大きな課題となっている.今後の指導体制とカリキュラムの構築が求められている中で,心身医学の担う役割は大きい.

    医学教育における心身医学のモデルとなるカリキュラムを構築し,全人的医療の担い手としての位置づけを確立していくことが重要である.

  • 堤 明純
    2024 年 64 巻 4 号 p. 341-345
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    行動科学は,その教育や臨床面への応用の点で,心身医学と密接な関連がある.医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)では,医師として求められる基本的な資質・能力のうち,総合的に患者・生活者をみる姿勢(GE)のGE-01全人的な視点とアプローチの中に,生物・心理・社会的な問題への包括的な視点とともに行動科学が位置づけられている.日本行動医学会は,わが国の医学教育で推奨したい行動科学カリキュラム案を提案している.カリキュラムは,アウトカム志向型を目指すものであり,心身医学の教育,臨床は上に挙げた多くの要素を包含している.行動科学教育が目標とするところは,全人的医療を実践する医療者の醸成である.行動科学教育の課題として,低学年から臨床実習に至るまでの体系立てられた教育の必要性や,その評価方法の確立が課題として挙がっている.行動科学教育の推進に,心身医学領域から多くの貢献が期待される.

  • ―学生教育と地域の医療関係者勉強会―
    堀 礼子, 山本 さゆり
    2024 年 64 巻 4 号 p. 346-353
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    中部地区には心身医学講座をもつ大学はないが,先達方により,学生に対する心身医学の講義や,研修医教育,研究会などの自己研鑽や交流の場が提供されてきた.現在愛知医科大学で行っている2つの取り組みを紹介する.愛知医科大学では,医学教育モデル・コア・カリキュラムに従って,2018年から選択講座を創設した.筆者は,2019年から「ストレス関連疾患「心身症」とはなにか?」というテーマで,日本心身医学会会員の協力を得て,医学部3年生を対象に講座を開講した.また,愛知医科大学総合診療医学講座・睡眠科に所属する医師・心理師による勉強会・症例検討会を2020年から開始した.当初は自分たちの担当患者の紹介や相談を毎月1回行っていたが,2021年からは愛知心身医学検討会として毎月1回約1時間オンライン会議として,近隣の医療担当者・研究者など38名が会員登録し,症例検討や研究の紹介・相談を行っている.

  • 端詰 勝敬
    2024 年 64 巻 4 号 p. 354-358
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    医学教育は毎年のように改革が行われ,変化への適応が医学部に求められている.行動科学は,全医学部で実践しなければならない教育内容として挙げられており,教育カリキュラムでも重要な位置を占めるようになった.

    医学教育における行動科学の定義,位置づけ,意義などについては,医学教育に携わる教員の立場や考え方によって違いがみられ,今なお議論が続けられている.この部分は心身医学や心療内科のあり方について意見が分かれるのと似ている.一方,全人的医療人教育も多くの医学部でキーワードとなっており,心身医学とも概念は似通っている.心身医学を医学教育でどのように発展させていくかを考えるうえで,行動科学と全人的医療人教育との住み分けを考える必要がある.

原著
  • 釋 文雄, 石風呂 素子, 三輪 雅子, 丸岡 秀一郎
    2024 年 64 巻 4 号 p. 359-367
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/01
    [早期公開] 公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    背景・目的:全人的医療が医学教育の中で重要となっている.医学生が地域医療実習へ参加することで,実践的に全人的医療の理解が促されると考え,実習の中でどのような気づきが得られたか質的に解析する. 方法:日本大学医学部6年生で地域医療実習に参加した医学生のレポートを修正グラウンデッドセオリーにより質的に解析する. 結果:コアカテゴリーは,【患者に対する気づき】,【実践的医療に対する気づき】,【地域医療に対する気づき】に分類され,サブカテゴリーは,〈患者への向き合い方〉,〈診療の実際〉,〈患者家族との連携〉,〈コミュニケーションの重要性〉,〈問診の重要性〉,〈地域医療の実際〉が抽出された.各内容からそれぞれの気づきがあり,患者を全人的にサポートすることの重要性を感じていたことがうかがえた. 結論:地域医療実習に参加した学生は全人的医療の重要性を感じており,地域医療実習におけるさまざまな気づきを経ることで,今後の全人的医療の理解に有用と考えられる.

  • 橋本 和明, 竹内 武昭, 小山 明子, 武田 典子, 端詰 勝敬
    2024 年 64 巻 4 号 p. 368-374
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/01
    [早期公開] 公開日: 2024/05/20
    ジャーナル フリー

    身体症状症および関連症群(SSRDs)は難治性で臨床的な転帰の予測も難しい.本研究では50名のSSRDs患者の臨床症状を縦断的に追跡し,病状改善の予測因子について検討した.身体症状をThe Somatic Symptom Scale-8(SSS-8)で評価し,2021年度から2022年度にかけてスコアの改善有無で対象者を2群に分類し,エントリー時に評価した抑うつ気分や不安,破局的思考,年齢や性別などの背景要因について群間比較すると,症状改善群は飲酒者が少ない傾向があり,ベンゾジアゼピン系抗不安薬の使用者が有意に少なかった.SSS-8の改善有無を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果,ベンゾジアゼピン系抗不安薬の使用が負の関連因子として抽出された.SSS-8の重症度の改善有無についても同様の解析を実施したが,同様の結果であった.本研究からベンゾジアゼピン系抗不安薬が使用されたSSRDsでは,1年後の病状に改善を認めにくい可能性が考えられた.

連載 心身医療の伝承―若手治療者へのメッセージ
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