抄録
うつ病やパニック障害に伴い,身体症状としての消化器症状に悩む患者群は多い.われわれも救急医療の場面で遭遇する頻度は高いという報告をしてきたが,他の報告とも矛盾していない.われわれ心療内科医に紹介されるまでには,一般身体科を経て異常なしと受診される患者も多く,内服投与のみでは改善せず,また時間をかければ良くなるかというわけでもない.その中でも腹部不快感や腹痛が治療の焦点になるかと思われるが,機能性消化器疾患のように心身医学的治療アプローチが必要である.ベンゾジアゼピン系抗不安薬などの依存を作ってはならないし,医師-患者関係の共依存となっても治療上マイナスである.患者主体の医療を目指すべく,薬物療法,認知行動療法,呼吸法,故池見酉次郎先生が提唱されたヘルス・アートの概念,そして補完・代替医療まで紹介したい.