抄録
人間は,「我と汝」「我と我」「我と神的存在」との関係の中で生きている.「いのち」が危機に直面すると「我と我」「我と神的存在」の関係が顕著に意識される.その関係性をよりいっそう意識化し,活性化して患者の「いのち」の土台,意味,希望を見出す援助がスピリチュアルケアである.「我と我」「我と神的存在」の関係を重視する視点は,患者の存在,現状,将来をより全体的視点から見直すことを促す.その結果,見失った自己の生きる意味,目的,希望の気づきにつながる.そこに自己回復という「癒し」がある.医療者には,患者の言葉,態度の中にスピリチュアルな側面を見て取る感性と解釈法が求められる.