2013 年 53 巻 11 号 p. 1011-1017
歯科心身医学は,従前の技術偏重主義への反省から大きな期待をもたれて誕生した.臨床的にもますますニーズが高まってきている.歯科界の認知も得られつつあるが,いまだ十分な実力を備えたとはいえない.歯科心身症の診断や治療に進歩もみられるものの,「心身症」概念の混乱や治療に関する臨床データの不備など課題は多い.われわれの目指す新しい歯科心身医学とは,中枢を巻き込んだ歯科的症状,いわば"歯とこころ"が複雑に絡み合った病態に対応する総合的学問体系を意味している.先人の業績を礎に,さらに臨床と研究を積み重ね,もっと歯学教育に溶け込んで,次の世代に即応した「心身医学」を継承していくことが求められている.