近年,毛髪コルチゾール濃度(HCC)が中長期的なストレス評価指標として注目を浴び,主観的評価ではとらえられない客観的な心理的指標となる可能性が指摘されている.本研究では,前思春期~思春期の時期にある一般的な小児を対象に,毛髪に蓄積したHCCおよび抗ストレス指標であるDHEA,レジリエンス指標であるDHEA/HCC比を測定し,性差や発達差について検討し,生体指標と主観指標の関連性を調べた.その結果,毛髪によるストレスホルモンの生体指標が,思春期的な心理的危機の一端を示す可能性が示され,小児のストレス把握に貢献する可能性が示唆された.男子においてはDHEA,DHEA/HCC比指標と主観的ストレスとの関連性が高く,HCCのみならずDHEAへの着目の意義が示唆された.女子においては生体指標と主観指標との関連が示されず,今後他の心理的指標を用いてさらに検討する必要があると考えた.