心身医学
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症例研究
低リン血症を契機にビタミンD欠乏性骨軟化症の診断に至った神経性やせ症の1例
中村 拓也藤本 晃嗣辰島 啓太辻 裕美田村 奈穂河合 啓介
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2023 年 63 巻 1 号 p. 46-51

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抄録

神経性やせ症の合併症として骨粗鬆症はよく知られているが,骨軟化症の報告は少ない.今回,低リン血症を契機にビタミンD欠乏性骨軟化症の診断に至った1例を経験した.

症例は50代女性.X−30年より体重減少が始まり,X年にbody mass index(BMI)10kg/m2まで低下し,神経性やせ症の診断にて当科で治療を開始した.X+4年に自宅にひきこもるようになり,同年,血清リン値が0.5mg/dlまで低下したため当科に緊急入院した.入院後,著明な低リン血症,高骨型ALP血症,骨密度低下,骨シンチグラフィ取り込み亢進(肋骨,脊椎),ビタミンD欠乏を認め,ビタミンD欠乏性骨軟化症と診断した.本症例は長期間の低栄養状態に加え,ひきこもりが骨軟化症の病態の原因であったと推察する.重篤な症状は出現しておらず,低リン血症により早期に診断できたものと考える.神経性やせ症患者はビタミンD欠乏症のハイリスクと考えられるため,骨粗鬆症だけでなく骨軟化症の可能性を考える必要がある.

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© 2023 一般社団法人 日本心身医学会
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