日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
Print ISSN : 0915-2245
ISSN-L : 0915-2245
原著
ベロ毒素産生性大腸菌O157感染により溶血性尿毒症症候群を発症した骨髄移植後急性リンパ性白血病男児例
川村 尚久竹中 義人山口 仁山崎 剛井上 雅美河 敬世島川 修一芦田 明玉井 浩
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 11 巻 2 号 p. 129-134

詳細
抄録
 骨髄移植後急性白血病を既往歴に持つ患児のベロ毒素産生性大腸菌 (VTEC) O157感染後溶血性尿毒症症候群 (HUS) 発症例を報告した。症例は急性リンパ性白血病の12歳男児で,骨髄再々発後にHLA適合非血縁者間移植を2年2カ月前に施行。移植前処置は全身放射線照射+melphalan+thiotepaで,免疫抑制剤はFK506を投与した。複数の移植後合併症あるも無事生着,FK506投与中止1年5カ月後に集団食中毒によるVTEC O157感染症に罹患し,腹痛,血便等の消化器症状出現第3病日より入院加療した。早期より抗生剤・γグロブリンを投与したが,第7病日に血小板減少,溶血性貧血,腎機能障害を認めHUSを発症した。本例はVTEC感染後のD(+)HUSであるが,既往歴に様々なD(-)HUSの発症危険因子があり,それらが臨床経過に何らかの影響を及ぼした可能性を否定できないため,診断や治療方針に苦慮した。抗癌剤,免疫抑制剤等の投与や放射線療法の治療歴のある疾患群がVTECに感染した場合はHUS発症が予想される既往歴として健常児とは別に考えるべきであると思われ,D(+)・D(-)HUSの鑑別診断の重要性が再確認された。
著者関連情報
© 1998 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
次の記事
feedback
Top