経静脈輸液療法の適切な実施には,体液区画における水分分布の理解と脱水症の2つの臨床病態(volume depletion, dehydration)の認識が不可欠である.従来,ショックや重度脱水症の小児に対し等張晶質液による迅速な輸液蘇生が実施されてきたが,急速大量輸液の安全性についての懸念から輸液量を制限した輸液蘇生が主流となりつつある.維持輸液療法では,Holliday-Segar式(HS式)に基づく低張液が使用されてきたが,小児患者に潜在的に存在する抗利尿ホルモン不適切分泌症候群による医原性低ナトリウム血症の併発を考慮し,HS式よりも制限した輸液量で等張液が選択されることが主流となっている.輸液蘇生と維持輸液療法の処方について一定の結論が出ていない現状では,輸液療法が重篤な併発症をもたらす可能性があることを認識し,患者の状態を繰り返し評価することで適切な処方へ修正することが重要である.
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