日本小児腎臓病学会雑誌
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最新号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
オピニオン
  • 芦田 明
    2024 年 37 巻 p. 45-51
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/18
    ジャーナル オープンアクセス

    新型コロナウイルス感染症が5類感染症へと引き下げられ,社会の経済活動も徐々に回復基調にあることも踏まえて,今回の第58回日本小児腎臓病学会学術集会は,第54回の学術集会以来久しぶりの対面のみでの学術集会として開催させていただいた.学術集会のテーマを「Serendipity~一つ一つの出会いを大切に~」とし,この出会いは,患児(子ども)たちや,師,ともに医療を行う仲間,自分に続く後輩の先生方など人との出会いばかりでなく,新しい知識や,気づき,気づきを検証するための研究との出会いなど,さまざまな「出会い」を意味しているものとした.これらのさまざまな出会いが,これまでの医療の進歩を支える原動力ともなってきたと考えている.本稿では,私の臨床医としてのさまざまな出会い,経験を振り返りながら,お世話になった先生方に感謝の意を表するとともに次世代を担う若き小児腎臓医の先生方に,メッセージを送りたいと思う.

総説
原著
  • 井口 智洋, 濱田 陸, 岩佐 俊, 浅沼 宏, 幡谷 浩史
    2024 年 37 巻 p. 33-38
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル オープンアクセス

    小児腎尿路結石患者は,代謝異常を有する頻度が高いため,尿中代謝物の評価を行うことが推奨される.評価方法として24時間蓄尿検査が有用であるが,年少児では入院やカテーテル留置が必要となり,負担が大きい.単回24時間蓄尿検査が,背景に有する代謝異常の推定に有用か検討した.結石成分が判明しており,かつ蓄尿検査を行った9例を対象とした.Ca結石の7例中,蓄尿検査で高Ca尿症を2例,低クエン酸尿症,低Mg尿症を各1例で認めた.L-シスチン結石の2例はともに高シスチン尿症を認めた.蓄尿検査で同定された尿中代謝物異常が結石形成と関連した症例は,重複を含め9例中5例(56%)であった.一方,蓄尿で高シスチン尿症を認めた2例は,スポット尿すべてで高シスチン尿症を認めた.24時間蓄尿検査により代謝異常が推定可能な症例は約半数であり,十分ではなかった.スポット尿で代用可能な疾患もあるため,蓄尿検査は症例を選んで行うことが望ましい.

症例報告
  • Yuma Iwanaka, Yoshifusa Abe, Shuichiro Watanabe
    2024 年 37 巻 p. 63-67
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/16
    ジャーナル オープンアクセス

    Herein, we report the case of an adolescent patient with nephrotic-range proteinuria and hypoproteinemia caused by tiopronin. The patient was a 13-year-old adolescent girl who had been diagnosed with cystinuria at the age of 9-years. Initial treatment comprised urinary alkalization and tiopronin. Urinalysis showed 3+ proteinuria 43 months after the initiation of tiopronin treatment. Proteinuria was accompanied by 2.2 g/dL of hypoalbuminemia, hyperlipidemia, and high adiponectin levels. Considering the adverse effects of tiopronin, it was immediately withdrawn. Ten days after withdrawal of the drug, proteinuria and hypoproteinemia had completely resolved, and steroid therapy was therefore not required. These findings are consistent with those of nephrotic syndrome secondary to medication in our patient. Tiopronin, which is a common treatment for cystinuria, may cause nephrotic-range proteinuria and hypoproteinemia. Therefore, periodic urine analyses and patient follow-ups are warranted during tiopronin therapy for cystinuria.

  • 元吉 八重子, 松本 佳余子, 白 朋子, 清原 鋼二
    2024 年 37 巻 p. 15-20
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/05
    ジャーナル オープンアクセス

    生殖器異常を合併した片側腎無形成の4女児例を報告する.1例目は12歳時に発症した月経モリミナを契機に,2例目は12歳時に右子宮の留血症に感染症を合併したことを契機に,生殖器異常と診断された.以後当院では,片側腎無形成の女児には6歳でMRIを行い,生殖器異常の有無を確認した.3例目と4例目はいずれも6歳の時点でobstructed hemivagina and ipsilateral renal anomaly(OHVIRA)症候群と診断されたが,婦人科との併診も開始し,合併症なく経過している.OHVIRA症候群などの片側腎無形成に合併した生殖器異常は,年齢によって異なる契機で診断される.診断が遅れると,月経モリミナから子宮内膜症を発症するなどして不妊症へと至ることもあるため,積極的に検査を行い,生殖器異常を早期に診断し,合併症を予防していくことが重要である.

  • 郷田 聡, 大田 敏之, 大野 令央義, 谷 博雄, 壷井 史奈, 小野 浩明, 神野 和彦, 榊原 菜々, 野津 寛大
    2024 年 37 巻 p. 9-14
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/05
    ジャーナル オープンアクセス

    ARHGDIA遺伝子変異による先天性ネフローゼ症候群(CNS)は稀であり,報告症例もいまだ少ない.生後1か月でCNSを発症した男児が,急速に進行する腎機能障害を呈したため,当院転院後に血液透析を経て維持腹膜透析となった.ネフローゼ症候群(NS),腎機能障害以外に,小頭症や小顎症,斜視なども認めた.転院後てんかんも発症した.遺伝子検査にて ARHGDIA遺伝子のホモ接合性の新規のナンセンスバリアント(c.153C>G: (p.Tyr51*))を認めた.母親は同一変異のヘテロ接合体を有しており,片親ダイソミーと考えた.既報によると同遺伝子によるNSの発症様式はCNSと幼児期のステロイド抵抗性NSの2種類あり,いずれも末期腎不全に至る.合併症として知的障害,けいれん,視覚・聴覚障害があった.小頭症や小顎症は本症例のみだった. ARHGDIA遺伝子変異の表現型を明らかにするため,症例の集積が必要である.

  • 渡邊 祥二郎, 矢野 真啓, 青木 利紗, 八木 悠一郎, 柏木 孝介, 前澤 身江子, 千坂 俊行, 高田 秀実, 檜垣 高史, 小川 晃 ...
    2024 年 37 巻 p. 1-7
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/05
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は8歳男児.胆道閉鎖症のため生後3か月で葛西手術,1歳7か月時に生体肝移植を施行され,肝移植後肝静脈狭窄症による門脈圧亢進症および蛋白漏出性胃腸症のため長期入院加療されていた.8歳時に高度蛋白尿および血尿が判明し腎生検を施行したところ,光顕にてメサンギウム増殖および基底膜の二重化,蛍光抗体法にてfull house pattern, 電顕にて上皮,内皮下への沈着とメサンギウム間入を認めた.抗核抗体は陰性で,発疹や発熱などの症状はなくループス腎炎は否定的であり,造影CTにて脾静脈の拡張と腹水を認めたため,肝静脈狭窄症に伴う門脈圧亢進による二次性膜性増殖性糸球体腎炎と診断した.蛋白尿はプレドニゾロンにて速やかに陰性化し,リシノプリルにて寛解を維持している.小児の肝移植後遠隔期において,免疫複合体型糸球体腎炎が発症する可能性がある.

二次抄録
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