日本小児腎臓病学会雑誌
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最新号
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総説
  • 大塚 泰史, 郭 義胤, 白川 利彦, 仲里 仁史, 塩穴 真一, 宮田 純一, 宮園 明典, 粟田 久多佳, 中西 浩一
    2025 年 38 巻 論文ID: rv.24-036
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/12
    ジャーナル オープンアクセス

    九州学校検診協議会は,2004年に九州学校腎臓病検診マニュアルを作成し,九州各県で普及してきた.近年,小児慢性腎臓病の原因の多くが先天性腎尿路異常(CAKUT)となり,学校検尿ではCAKUTを含めたスクリーニングが全国で提唱された.九州も地域に合わせて尿中β2ミクログロブリン/尿クレアチニン比,超音波検査が導入できるように,マニュアルを第5版に改訂した.特に超音波検査は専門ではない医療者への啓発が必要であり,簡単な超音波マニュアルや動画の教材を作成した.約20年間にわたる九州学校検診協議会の歴史を紹介し,毎年公表している集計結果やIgA腎症の発見契機における学校検尿の役割など活動内容を解説する.Personal Health Record(PHR)導入をはじめ学校保健が進歩していく中で,九州学校検診協議会は学校検尿の成果や重要性を発信できるようさまざまな情報を活用し,今後も展開させる必要がある.

  • 稲毛 由佳, 松本 啓, 森本 啓太, 山中 修一郎, 横尾 隆
    2025 年 38 巻 論文ID: rv.24-018
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/05
    ジャーナル オープンアクセス

    現在,成人腎不全患者に対するブタ成獣異種移植が米国などで進められているが,患者への強力な免疫抑制や,ブタを維持するための広大な施設や多額の資金が必要である.一方,胎仔腎は低免疫原性を有し,移植臓器を提供するブタの施設規模や資金を縮小することができる.我々は,ブタ胎仔腎移植を腎性羊水過少シークエンスに臨床応用することを提唱している.腎性羊水過少シークエンスの胎児の皮下にブタ胎仔腎を移植し,成長させ,尿を産生させる.出生後,一時的に尿産生・電解質管理をブタ胎仔腎に頼り,出生後の呼吸・循環動態が不安定な時期の腎代替療法を回避する.最終的には腎代替療法を導入するが,この方法によって出生直後から腎代替療法がより安全にできるまでの架け橋治療をすることが目的である.胎児に対する異種移植は倫理面でより慎重になる必要があり,多角的な議論を重ね,臨床応用への道筋を慎重に探っていくことが重要だと考えている.

  • 坂井 智行
    2025 年 38 巻 論文ID: rv.24-034
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/04
    ジャーナル オープンアクセス

    経静脈輸液療法の適切な実施には,体液区画における水分分布の理解と脱水症の2つの臨床病態(volume depletion, dehydration)の認識が不可欠である.従来,ショックや重度脱水症の小児に対し等張晶質液による迅速な輸液蘇生が実施されてきたが,急速大量輸液の安全性についての懸念から輸液量を制限した輸液蘇生が主流となりつつある.維持輸液療法では,Holliday-Segar式(HS式)に基づく低張液が使用されてきたが,小児患者に潜在的に存在する抗利尿ホルモン不適切分泌症候群による医原性低ナトリウム血症の併発を考慮し,HS式よりも制限した輸液量で等張液が選択されることが主流となっている.輸液蘇生と維持輸液療法の処方について一定の結論が出ていない現状では,輸液療法が重篤な併発症をもたらす可能性があることを認識し,患者の状態を繰り返し評価することで適切な処方へ修正することが重要である.

原著
  • 上村 治, 石倉 健司, 寺野 千香子, 本田 雅敬, 後藤 芳充
    2025 年 38 巻 論文ID: oa.24-029
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/26
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景および目的】2014年に日本人小児のシスタチンC(cysC)に基づく糸球体濾過量推算式(eGFR[cysC-eGFR])を,イヌリンクリアランスをゴールドスタンダードとして作成した.最近この式が糸球体濾過量(GFR)を過大評価するという報告があり,妥当性について作成時を振り返って考察した.【方法】cysC-eGFRを作成したA社に他3社を加えて,標準化前のcysC値に標準化係数を乗じたものを使用して作成した4つのeGFRを比較した.【結果】この4つの推算式は決して一致しているとは言えなかった.A社の標準化係数の妥当性は過去に示している.現在わが国で使用しているeGFR=104.1/cysC−7.80の妥当性については,2012年から2016年にわが国の小児慢性腎臓病(CKD)研究グループの施設から集められたデータでクレアチニンに基づくeGFRと同等であることを示している.【結論】最近のcysC-eGFRのGFR過大評価は2017年以降の問題であると考えられ,これらを今後検討する必要がある.

  • 青山 周平, 齋藤 佳奈子, 坂口 晴英, 横田 俊介, 櫻谷 浩志, 藤永 周一郎
    2025 年 38 巻 論文ID: oa.24-011
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景および目的】軽度蛋白尿の小児IgA腎症の自然寛解率は20%程度と高くないが,レニン・アンジオテンシン系(以下,RA系)阻害薬による保存的治療が推奨されている.【方法】軽度蛋白尿(尿蛋白/クレアチニン比1.0 g/gCr未満)の小児IgA腎症59例(中央値13.0歳)に対するステロイドパルス療法と扁桃摘出術(扁摘パルス療法)の有効性と安全性を後方視的に検討した.【結果】蛋白尿は中央値8.0日で57例(97%),血尿は中央値6.8か月で57例(97%)が消失し,再燃は3例(5%)であった.重篤な有害事象は認めなかった.最終観察時(中央値18.3歳,観察期間6.0年),RA系阻害薬使用1例(2%),軽度蛋白尿残存1例(2%),血尿残存6例(10%)で,慢性腎臓病(CKD) stage 3以上は認めなかった.【結論】扁摘パルス療法は,将来CKD移行が否定できない小児では,初回治療として検討して良いと思われた.

  • 梅田 千里, 平野 大志, 浦島 崇, 松本 怜, 沼田 遙, 石川 悟, 田原 麻由, 井田 博幸, 大石 公彦
    2025 年 38 巻 論文ID: oa.24-027
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/26
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景および目的】有熱性尿路感染症(febrile urinary tract infection: fUTI)における急性腎盂腎炎と急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis: AFBN)の鑑別は治療方針の決定に重要である.現在,AFBNの診断のgold standardは造影CTでの限局した低吸収域の検出である.本研究では,AFBNの診断における超音波検査(ultrasonography: US)の有用性を,特に陽性的中率(positive predictive value: PPV)の観点から評価することを目的とした.【方法】2020年9月から2023年8月に初発のfUTIで入院した小児103名を対象に後方視的研究を実施した.【結果】USによるAFBNの診断基準を境界不明瞭な巣状の腫瘤と局所的な血流欠損とし,これに合致した10名中9名に造影CTを実施した結果,全例でUSと一致する部位に腫瘤状の不均一な造影不良域を認めた.AFBNに対するUSでのPPVは100%と高値を示した.【結論】USでAFBNが疑われる場合,必ずしも造影CTが必須ではない可能性が示唆された.

  • 真島 久和, 服部 俊彦, 後藤 芳充
    2025 年 38 巻 論文ID: oa.24-028
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/07
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景および目的】当科では小児腎移植術後から内服が可能になるまで血中濃度10 ng/mLを目標にタクロリムスの持続静注を行っている.術後の血中濃度を安定させるため,持続静注量の推算式作成を試みた.【方法】2016年1月–2023年8月に当院で腎移植を行った20歳未満の症例のうちタクロリムス持続静注を行い,血中濃度を測定した症例を対象とし後方視的検討をした.36例が該当し,血中濃度10 ng/mLを目標とする持続静注量を目的変数として多変量解析を行った.【結果】タクロリムス持続静注量は中央値0.48 mg/日(四分位範囲0.35–0.64),血中濃度は33例が手術翌日に測定しており12.5 ng/mL(10.8–15.0)であった.血中濃度10 ng/mLを目標とする持続静注量(mg/日)=1.358×体表面積(m2)−0.04809×年齢(yrs.)−0.27774であり,決定係数は0.38であった.【結論】小児腎移植術後にFK持続静注を行う場合,血中濃度10 ng/mLを目標とする持続静注量(mg/日)=1.358×体表面積(m2)−0.04809×年齢(yrs.)−0.27774である.

症例報告
  • 城田 淳, 久米 庸平, 前田 亮, 小野 敦史, 郷 勇人
    2025 年 38 巻 論文ID: cr.24-024
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/29
    ジャーナル オープンアクセス

    全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)の合併症のひとつにループス腹膜炎がある.SLEの活動期に一致して腹膜刺激症状などを呈する病態だが,小児例での報告はわずかである.症例は14歳女子.腹部膨満,下腿浮腫,腹痛を主訴に受診した.血液検査で低アルブミン血症,低ナトリウム血症,血小板減少を認め,精査加療目的に入院した.低補体血症を認めたが,dsDNA抗体や尿蛋白は陰性であった.画像検査では著明な腹水貯留を認めた.ステロイド治療により経時的に腹水は減少し,検査値の改善も得られた.その後腎生検にてループス腎炎(International Society of Nephrology/Renal Pathology Society [ISN/RPS])class III(A)を認め,SLEと診断した.ステロイドパルス療法,ヒドロキシクロロキン,ミコフェノール酸モフェチルによる治療を行い,寛解が得られた.本症例はSLE診断基準に合致しない部分もあり,診断に難渋した.早期診断のためには,ループス腹膜炎に対する理解と腎生検による評価が重要である.

  • 小林 杏奈, 中澤 瑞葉, 金井 宏明, 後藤 美和, 三井 貴彦, 沢登 恵美
    2025 年 38 巻 論文ID: cr.24-016
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/04
    ジャーナル オープンアクセス

    神経因性膀胱に対する腸管利用膀胱拡大術を施行後に,代謝性アシドーシスを繰り返し,成長障害を来した慢性腎臓病stage 3の12歳男児例を報告する.乳児期に,反復性尿路感染症,両側完全重複腎盂尿管,尿管膀胱移行部狭窄の診断で,両側尿管膀胱新吻合術を施行された.その後も尿路感染症を繰り返し,4本の膀胱尿管逆流症,神経因性膀胱の診断で,清潔間欠導尿を行っていた.しかし,尿失禁の管理が困難であったことから,12歳時に腸管利用膀胱拡大術が施行された.術後合併症として,腸管壁と尿が接することに起因すると考えられているanion gap正常高Cl性代謝性アシドーシスを繰り返し,5年以上アルカリ化療法剤の服用を要している.術後一時的に停滞した成長曲線が,アシドーシス管理開始以降,改善傾向となった.腸管利用膀胱拡大術後に代謝性アシドーシスを起こしうることや,アシドーシスは成長に影響を与えることを認識する必要がある.

二次抄録
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