抄録
C9完全欠損症に膜性腎症を合併した1女児を経験した。症例は5歳女児。感冒様症状を呈した後に蛋白尿および血尿を指摘され,精査入院となった。蛋白尿は0.4~1.0g/日,血尿は鏡検で赤血球15~20/HPF程度であり,浮腫,乏尿,高血圧は認めなかった。ASO,ASKは正常範囲内であり,血液生化学データに異常を認めず,抗核抗体,抗DNA抗体も陰性であった。C3およびC4は正常であったが,CH50が15.2U/mlと低下していたため,補体成分プロフィールを解析し,C9完全欠損症と診断した。入院後施行した腎生検組織では,stage I膜性腎症の所見を示した。感染症,薬物既往,自己免疫疾患などは否定的であり,特発性膜性腎症と診断した。C9欠損症と膜性腎症の合併の報告はこれまでなく,膜性腎症の発生病理を考える上でも興味深い症例と考えられ,文献的考察を含めて報告した。