日本小児腎臓病学会雑誌
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海外論文紹介
海外文献紹介:Tacrolimus for induction therapy of diffuse proliferative lupus nephritis:An open-labeled pilot study
久野 敏
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2005 年 18 巻 2 号 p. 158-160

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抄録

背景:タクロリムスは移植治療に使用されている比較的新しいカルシニュウリン阻害薬である。今回の研究の目的はびまん性増殖性ループス腎炎にタクロリムスを使用し治療した予備研究の経験を報告することである。方法:American College of Rheumatologyの基準を満たし,腎生検で確認されたびまん性増殖性ループス腎炎の9例にプレドニソロンとタクロリムス(0.1mg/kg/day,2カ月投与後,0.06mg/kg/day投与)治療をオープントライアルで行った。腎臓に対しての効果および血清学的な活動性に対するデータを前方視的に集めた。薬剤の効果および安全性も報告した。結果:患者の平均年齢33.3±12歳,女/男=2:1,血清クレアチニン94.2±46μmol/L,1日蛋白尿4.56±2.4gで,7例(78%)がネフローゼ症候群,3例(33%)が高血圧,4例(44%)が血清クレアチニン高値を腎生検時に示していた。治療6カ月後に完全および不完全寛解がそれぞれ6例(67%)および2例(22%)に得られた。治療を開始して2カ月時に蛋白尿,ヘモグロビン,血清アルブミンおよび血清C3が有意に改善した。2例に一過性の高血糖が見られた以外は感染症,無月経,多毛,歯肉炎,高血圧,血清クレアチニンの上昇などタクロリムスの副作用はなかった。結論:タクロリムスはびまん性増殖性ループス腎炎の寛解導入として有効な治療薬である。治療の至適量,投与期間そして従来の薬剤に比較してその治療効果を今後,さらに検討する必要がある。

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© 2005 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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