日本小児腎臓病学会雑誌
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原著
先天性腎尿路異常症患者における酸化ストレス環境の評価
—当院の年齢別基準値に基づいて—
塚原 宏一平岡 政弘森 夕起子巨田 尚子徳力 周子川谷 正男長坂 博範川上 寿子関根 恭一眞弓 光文
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2007 年 20 巻 2 号 p. 131-135

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抄録

 先天性腎尿路異常症患者においては,機能的ネフロンが減少して腎機能低下が進行する危険性が少なくない。われわれは,先天性腎尿路異常症を有する小児患者を対象に,腎臓局所において酸化ストレスが亢進しているかどうか特異的マーカーを用いて調べた。対象は小児患者46名 (男32名,女14名; 1.2~16.0歳) で,原発性膀胱尿管逆流症 (以下,VUR) 患者20名とVURを呈さない (以下,Non-VUR) 患者26名に分けて評価した。特異的酸化ストレス・マーカーとして,尿中8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG),acrolein-lysine, nitrite/nitrate濃度を計測した。健常者100名 (男50名,女50名; 1.5~21.0歳) から得られた年齢別基準値に基づいて,患者群での計測値をSDスコアで表した。25名 (VUR群で12名,Non-VUR群で13名) では,血清中nitrite/nitrate濃度も計測した。尿中酸化ストレス・マーカーについては,VUR患者と健常者との間に差は見られなかった。Non-VUR患者の場合,特に多嚢胞性異形成腎,無形成腎,低形成腎の患者で,健常者と比べてacrolein-lysineが異常高値を呈する患者が目立った (8-OHdGではそのような傾向はなかった)。このような患者では,腎臓局所での脂質・蛋白質酸化が亢進していることが示唆された。nitrite/nitrateの生成・排泄については,患者群で明らかな異常は見られなかった。今回の研究で得られた結果は,先天性腎尿路異常症における慢性腎障害の進展機序を解明し,その対策を立てるための手がかりになると考えられた。

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© 2007 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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