2008 年 21 巻 1 号 p. 74-76
小児期のネフローゼ症候群では微少変化型 (MCNS) が最多であるが, その病因はほとんど解明されていない。本症の発症には免疫異常が関与しており, 足突起の退縮とアルブミン尿を惹起する透過性因子が存在することが実験的あるいは臨床的に示唆されている。1970年代中頃から現在に至るまで, その主役はT細胞機能異常であると考えられてきた。この考えはMCNS患者のTリンパ球培養上清を全身投与されたラットで蛋白尿が出現したこと1)で,さらに強固なものとなった。しかしながら, その後の広範な研究にも関わらず, 透過性因子は未だに同定されておらず, MCNSの発症機序も不明なままである。
今回は, リツキシマブ (抗CD20抗体) の投与によってのみ長期の寛解を得ることができた頻回再発型MCNSの成人例を初めて報告する。リツキシマブはCD20を発現するB細胞を標的とするため, B細胞リンパ腫あるいはB細胞依存性の自己免疫疾患の患者に使用されている。本症例の経過はB細胞もまたMCNSの発症に関与している可能性を示唆するものである。既報の臨床的および実験的データに基づき, 本症におけるB細胞の役割について論じてみたい。