抄録
近年,各種腎不全治療の目覚ましい進歩により,小児末期慢性腎不全の生命予後は著しく改善している。しかし,精神発達遅滞や合併奇形を伴う場合,患者の遅滞や障害の程度,家族のサポート状況などを踏まえ,個々に腎代替治療の適応を判断する必要がある。今回われわれは,精神発達遅滞を伴う末期慢性腎不全の3症例に血液透析 (hemodialysis: HD) を導入した。いずれの症例も成人年齢に達していたが,家族の希望があり,当科で治療を行っていた。
3症例とも,家族の患者や病気に対する考え方の変化や,患者自身の精神面での成長を受けて,経過中に治療方針の転換をする必要があったが,いずれもHDを導入し,患者や患者家族に良好な変化が見られ,QOLの改善につながった。
今回の3症例を経験し,われわれ医療スタッフは,常に変化しうる家族の意思や患者の成長を念頭に入れて,日々の診療を行わなくてはならないと改めて痛感した。