抄録
小児の尿路感染症では抗生剤の採尿前投与などで起炎菌が同定されず,診断に苦慮することも多く,膀胱尿管逆流症の精査を受けずに後に逆流性腎症,末期腎不全として発見される例もある。今回,我々は尿路感染症が疑われる児や熱源が不明である児に対して腹部超音波検査で腎血流の低下を検出することにより尿路感染症と診断した症例もしくは尿培養陽性をもって尿路感染症と診断した症例を起炎菌検出の有無,腎血流低下の有無を基に3 群に分け比較検討を行った。起炎菌同定かつ腎血流正常[UC(+)US(−)]群では他の2 群と比較して有意に低月齢であった。起炎菌同定ができずかつ腎血流低下[UC(−)US(+)]群では抗生剤の前投与が有意に多かった。膀胱尿管逆流症は腎血流低下[UC(−)US(+),UC(+)US(+)]群で50 %,47.1 % と腎血流正常[UC(+)US(−)]群での18.4%と比較して有意に高率であった。腹部超音波で腎血流を評価することは熱源の特定および膀胱尿管逆流症を予測するうえで有用であると考えられた。