抄録
メサンギウム (Ms) という糸球体軸部の存在が形態学的に認識されたのは1933年のZimmermannの記載をその嚆矢とするが,生理学的状態でのその意義についても次第に明らかにされてきた。血管係蹄の支持的構造物としての認識から出発して以後,トレーサー物質の投与によるMs内のリンパ流路 (メサンギウム流路) の発見はMsのもつ浄化能力が糸球体の恒常性の維持に必要であることを教えた。また単離糸球体の培養によってMs細胞がアンギオテンジンIIレセプターをもち収縮能力があることが明らかにされ,糸球体血管床の面積や糸球体内圧の調正さらにはMs流路の効率的な発動への関与も示唆されるに至った。また従来一種類と思われていたMs細胞に由来を異にする骨髄起源の抗原提示能をもったマクロファージが含まれることも明らかになるに及んで,Msの免疫担当能も議論の対象となってきている。糸球体腎炎に際してMsにはこれらの生理的機能の亢進あるいは過剰の負担が強いられ,種々の病理現象が惹起される。Msを主座とする種々の障害の修復,進展が糸球体の機能を左右する。Msに出現する代表的な組織障害について概覧と考察をしてみたい。