2019 年 32 巻 2 号 p. 77-85
体液量と水電解質異常の評価およびそれに基づいた輸液の選択は小児診療における日常的な課題である.低張液輸液による hospital-acquired hyponatremia (医原性低ナトリウム (Na) 血症) の危険性が指摘され,維持輸液として等張液を用いることが推奨されるようになった.しかし,その根拠となった文献において低張液輸液で症候性低 Na 血症や死亡などの重篤な有害事象の発生頻度が有意に増加することは示されておらず,現時点において維持輸液として画一的に等張液を選択するということについては疑問が残る.むしろ,実際の患者の状態を観察し,抗利尿ホルモンの分泌刺激となりうる病態の評価を行いつつ,維持輸液開始後に適切なモニタリングを行うことが重要である.このためにも,基本的な脱水,血清Na異常の病態理解と評価が重要であり,体液量と総陽イオン量で血清Na 値をとらえる概念が非常に有用である.