2022 年 35 巻 2 号 p. 53-59
第57回学術集会を担当し,テーマは「小児腎臓病のエビデンスを紡ぐ」とした.「紡ぐ」とは綿や繭を錘にかけて繊維を引き出し,縒りをかけて糸にすることで,比喩的に言葉をつなげて文章を作るといった使い方がされる.エビデンスをつないでいく,また,ひとつひとつのエビデンスを組み合わせて実臨床を形作る,そのような思いを込めて本学術集会のテーマとした.私は実臨床・臨床試験・研究は一連のものだと考えている.これらが有機的につながることにより推進力が生まれ,より良い医療に結びつく.物事を進めるためには,能力,努力,環境,運のいずれもが必要である.環境においては人々の支えが大きい要素の一つである.私はこれまで30年以上にわたり多くの腎臓病をもつこどもの診療にあたってきた.本稿ではこれまでを振り返り,実臨床・臨床試験・研究におけるさまざまな内容を記載し,自らのさらなる尽力を目指しつつ,若手医師にメッセージを伝えたいと思う.