2022 年 35 巻 2 号 p. 71-78
本邦における最初の腎生検は1954年に新潟大学で行われた.小児の腎生検も同じく新潟大学で1957年に行われたという記録がある.病理アトラスなどが存在しなかった当時は,腎生検組織の観察,臨床症状と病態の解釈,および治療方針の決定まですべて術者自身で行っていた.以来約70年が経過し,腎生検という手技と診断はそれぞれ臨床医と病理医の役割として分離されるようになった.さらに,数々の病理所見に基づく診療ガイドラインも作成され,自ら組織を観察せずとも病理診断をもとに画一した治療を行うことが可能となった.しかし,ガイドラインに基づく治療が奏功しない「非典型例」もしばしば存在し,治療をどの方向に修正するべきか迷うことがある.このような時,腎生検の病理所見は治療方針を考えるうえで有用な情報源となる.
本総説では,腎生検の基本に加え,基本的な病理所見の解釈について解説する.