1992 年 5 巻 1 号 p. 58-64
1977年から1988年の間に当施設で実施した腎生検においてIgA腎症と診断された症例のうち,腎生検時年齢が15歳未満で,腎生検後2年以上経過観察が可能であった症例は120例であった。そのうち,8例が末期慢性腎不全に陥り,4例が腎機能低下状態に至った。そこで小児期IgA腎症における増悪指標について明らかにする目的で,これら12例を腎機能低下群とし,残り108例との間で臨床病理学的に比較検討を行った。
腎機能低下を来した症例は,臨床的にネフローゼ症候群や高血圧を合併し,急性上気道炎を反復して羅患する傾向にあった。また病理組織学的には,半月体,癒着,硬化といった巣状病変が広汎に認められた。
小児期IgA腎症例における進行性の見極め,ならびにそれら症例に対する適切な治療法の確立が極めて重要な課題であると考えられた。