日本小児腎臓病学会雑誌
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原著
ヒト糸球体上皮細胞に対するモノクロナール抗体1F3: 腎上皮細胞障害の新しいマーカー
森本 雄次香美 祥二岡田 要安友 康二久原 孝黒田 泰弘
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1996 年 9 巻 2 号 p. 222-228

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抄録
 糸球体腎炎における腎上皮細胞障害の重要なマーカーとなりうる細胞表面抗原を同定するために,培養ヒト糸球体細胞で免疫したマウスよりモノクロナール抗体1F3を作成した。正常腎における蛍光抗体法 (IF) ならびに免疫電顕法 (IEM) による検索では,1F3認識抗原 (1F3抗原) は糸球体上皮細胞表面に強く,ボーマン嚢上皮細胞表面にごく弱く発現しているのみであった。単離糸球体を用いた免疫沈降法の結果,1F3抗原は分子量125KDaのポリペプチドであった。糸球体腎炎および間質性腎炎患者の生検組織でのIF検索では,1F3抗原は細胞性半月体に認められず,線維細胞性半月体に強く発現していた。また,硬化糸球体での1F3抗原発現は減弱していた。種々の腎炎に見られる萎縮尿細管に1F3抗原の新たな発現が観察され,その発現程度は,萎縮尿細管の割合とよく相関していた。以上のことから1F3抗原は,腎炎における腎上皮細胞障害により特徴的に発現変化する細胞表面分子であり,進行性腎炎の有用なマーカーになりうる可能性がある。
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© 1996 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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