抄録
要旨: 症例は16 歳男児。11 歳時に学校検尿で顕微的血尿を認め,当院を受診した。受診時の理学所見上は異常を認めなかったが,超音波検査で右腎臓上極に限局した多発性の囊胞を認めた。CT 検査,MRI 検査でも同部位に多発性囊胞が確認されたが腎外病変の存在はなかった。DMSA シンチグラフィでは囊胞部位に核種の取り込みの欠損を認めた。経過と形態学的所見からunilateral and segmental localized polycystic kidney disease を疑い,経過観察をしていた。以降5 年の間,側腹部痛を伴う囊胞内出血のため入院となった以外は無症状で経過している。同疾患は良性の疾患で外科的処置は基本的に必要がないとされている。しかし確定診断が非常に困難であり,悪性疾患を否定できず手術となる症例も報告されている。本症例も臨床症状や画像検査の継続的評価が必要であると考えられた。