2023 年 43 巻 5 号 p. 235-244
足部あるいは趾部外傷,または,疼痛などを主訴に受診した患者のX線画像検査において,主訴とは別の部位の第5趾遠位趾節間関節に骨性癒合をみることが多い。さらに,時に第5趾と第4趾,または第3,4,5趾の遠位趾節間関節にも骨性癒合をみる症例を経験する。これらの症例は,骨性癒合の趾に明らかな外傷などの既往はなく,さらに,生下時よりそれらの趾の形態,機能異常を自覚していない。われわれは2015年ころより,このような遠位趾節間関節の骨性癒合を観察していた。われわれの施設で,2020年10月1日より2021年9月31日までの1年間に足部X線撮影を行い,第1趾から第5趾のすべての趾の趾節間関節を確認できる撮影画像を対象症例として,趾の遠位趾節間関節癒合について検索した。
わが国での足多趾症は外側(軸後性,腓骨側)がほとんどであることは周知である。形成外科領域では多指(趾)症手術の術式を決定する際は,指(趾)節骨の形態,形成,関節運動,手術創痕などを考慮して行われている。機能的,形態的異常はなく,趾の外傷歴もない遠位趾節間関節癒合の存在を考慮した場合に,足多趾症の術式の決定には発育抑制の少ない選択が望まれる。