住宅建築研究所報
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子供の個室保有が自立の発達と家族生活に及ぼす影響(1)
日米比較研究の予備的研究
北浦 かほるRoger A. Hart田丸 満Lanne G. RivlinMaxine Wolfe中野 迪代
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ジャーナル オープンアクセス

1988 年 14 巻 p. 157-170

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抄録
 子供の幼年期の発達は,社会と物理的環境の経験及びそれをコントロールする経験を通して,「独立した自己の存在」をつくる一方,「社会的な存在」をつくり上げることとしてとらえられる。空間の所有や行為の選択についてのプライバシーの選択は,自立に結びつくものであり,物埋的環境としての個室空間が子供の社会化過程で自立と深いかかわりを示すことが推測される。本研究は,個室の子供室が子供の自立の発達や家族生活とどのようにかかわっているかをとらえるための予備的研究であり,日米の異文化の視点でとらえることこよって,その基盤に共通する空間の影響をより把握しやすくすると考える。子供・親(家族)・空間を指標とし,子供室の実態(専有度,出入口の状態,ドアの開閉,間仕切りの状態,鍵の有無と使用)とそこでの子供の生活,すなわち持ち込まれた装備や行為と生活時間,及びそれに関与する人や物と,その管理の状態を求めた。次いで就寝分離や親子のコミュニケーション,子供の役割分担などを含む家族の生活様式と親の養育態度等の関連を明らかにし,それらが子供の精神面・生活面・経済面での社会化の達成とどのようにかかわっているか多面的に実態を究明した。セッティングとしての子供室空間の専有度は,生活行為の質的内容に影響を及ぼすほか,精神面達成数や,精神面・生活面・経済面のいくつかの項目とかかわっている。その基盤には日米とも親の管埋の影響がみられる。管理は侵入数ともかかわりをもっているほか,養育態度のいくつかの項目や,日本では役割分担の有無が重要なかぎになっていると考えられる。親とのコミュニケーション数は,一方では子供の役割分担と,他方では侵入数などとつながっており,親の子供への関心の高さを表す指標ではあるが,これだけでは関心の内容がわからず,子供の自立促進の指標とはなりにくい。これらの結果を踏まえて空間の管理と自立との関係をさらに追求することが次の課題である。
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© 1988 一般財団法人 住総研
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