形成外科の日常臨床において,一般的な情報提供や標準治療のみでは対処が困難な患者(対処困難患者)に遭遇することがある。そうした人々への理解とケアに,アピアランス心理学が応用されてきている。もともと心理的脆弱性を有する患者に,他者から観察可能な身体的な差異(可視的差異)が発生すると,対人関係能力が低下しやすく,アピアランスに関連した心理社会的問題につながりやすい。心理的背景への理解では,社会的比較および賞賛獲得欲求と拒否回避欲求が重要である。介入技法としては段階的ケアモデルが実用的で,レベル1~4が設定されている。患者の多数を占める軽症のレベル1と2では,医療スタッフによるカウンセリングと情報提供が主体になる。少数の重症例のレベル3と4では,現場スタッフに心理士・精神科医が協力して集中治療が行われる。日本心理学会では医療者も対象に入れた教育研修会を開催して,本技法の普及を進めている。