日本レーザー歯学会誌
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CO2レーザーを歯周ポケットに照射した際の歯肉組織の反応について
エヌ・エイチ・エム・ カイルール・マティン田口 直幸伊東 直子草刈 玄
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1999 年 10 巻 1 号 p. 61-69

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抄録

感染した接合上皮と結合組織を無菌化することを目的として, 歯周ポケットにCO2レーザーを照射した際の歯肉組織の変化について検討した。実験には, デフォーカス型のCO2レーザーと6頭の雑種成犬を用いた。実験に先立ち, イヌには毎日15~20分のブラッシングを1週間続けて行った。この時点での歯周ポケットは, 最高で3mmであった。実験的な歯肉炎は, 軟食を与えてブラッシングも中止することにより引き起こし, 4週後には平均で1~2mm歯周ポケットが増加した。小臼歯と大臼歯の頬側歯肉45部位に, 0.3から2.5Jの範囲で出力を変化させて照射した。他の15部位については, 照射せずにコントロールとした。照射後7日と14日に, 臨床的および組織学的に歯肉組織の反応を観察した。照射直後には, 軽度の歯肉炎が観察された。組織の破壊程度は出力に関係しており, すなわち最大の組織破壊 (到達深度が1.4mmで創傷領域が0.33mm2) は最高出力 (2.5J) の場合に起こった。7日後には, 照射された歯肉の再上皮化がほぼ完全になされており, 結合組織にも新生したコラーゲン線維が形成されていた。特に0.5~1.5Jの照射出力の時は, コントロールよりも健康的な歯肉が臨床的にも組織学的にも認められた。この時期には, 炎症性の細胞は顕著に減少していた。14日後になると, レーザーを照射した歯肉は完全に治癒し, 傷害を受けた痕跡は全く観察されなかった。今回の実験から, 周囲組織を損傷せずに感染した接合上皮を無菌化することができるCO2レーザーの出力範囲を考察することができた。

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