2025 年 3 巻 1 号 p. 18-24
【目的】外国人技能実習生に対して介護技術研修と健康調査を行う機会を得た.その経験から外国人技能実習生に対して理学療法士が関わる意義について検討した.
【方法】対象はミャンマー国籍の技能実習1号の女性2名とした.研修および健康調査期間は2023年9月から2024年4月までに計5回実施し,1回あたり1時間程度行った.介護技術研修は資料を用いて対面で行い,健康調査は自記式質問票にて行った.
【結果および経過】2回目の調査時に2名とも腰痛の発生を確認した.研修内容を一部変更し腰痛教育と介護技術の確認,自主トレーニングの指導を行った.3回目の調査時にはそれぞれ腰痛は消失しており,4回目の調査でも腰痛の再発はなく技能実習を継続できていた.
【結論】実習開始後に腰痛が発生したが,理学療法士が継続的な関わりをもてたことで早期発見,対処および再発予防をすることができた.外国人技能実習生の健康管理について理学療法士が重要な役割を果たせる可能性が示唆された.
Purpose: We had the opportunity to conduct caregiving skills training and health surveys for foreign technical intern trainees. We examined the significance of having physical therapists involved with these trainees.
Methods: The subjects were two female technical intern trainees from Myanmar. Training and health surveys were conducted five times between September 2023 and April 2024, with each lasting about one hour. The caregiving skills training was conducted face-to-face using materials, and the health survey with a self-administered questionnaire.
Results and progress: The occurrence of back pain was confirmed in both participants at the time of the second survey. By the third survey, the back pain had disappeared, and by the fourth survey, there had been no recurrence and the trainees were able to continue their skills training.
Conclusion: Although trainees experienced back pain after starting their technical internship, a continuous relationship with a physical therapist enabled early detection, treatment, and prevention of recurrence. This study suggests that physical therapists may play an important role in the health management of foreign technical intern trainees.
厚生労働省の発表によると,日本で働く外国人労働者は2023年10月には200万人を超えており,2022年10月時点に比べ約22万人増加1)している.在留資格別では,永住者や日本人配偶者等が含まれる「身分に基づく在留資格」が最も多く全体の30.1%であり,次いで高度専門職や特定技能が含まれる「専門的・技術的分野の在留資格」が29.1%,「技能実習」が20.1%となっている1).技能実習制度は,1993年に創設され,我が国で培われた技能,技術又は知識の開発途上地域等への移転し,経済発展を担う人材育成を目的としている.2017年には,技能実習法が施行され,介護職種も対象職種となった2).
本邦ではかねてより介護人材不足が指摘されており,厚生労働省の発表では2025年時点の介護人材の需給ギャップが約37.7万人と推計されている3).介護離職者は毎年約10万人にのぼり,2030年には約318万人がビジネスケアラー(仕事をしながら家族等の介護に従事する者)になる4)と予測されている.こうした背景から, 2024年には特定技能外国人の訪問介護サービスへの従事が認められ5),今後も介護分野における外国人労働者の活躍が期待されるとともに,日本での就労者数もさらに増加すると予測されている.
一方で,介護分野における外国人労働者の問題は,日本語能力及びコミュニケーションの問題6-10)やメンタルヘルスを含む健康問題10-13)について先行研究で報告されている.なかでも外国人技能実習生の労働災害については,約5割が実習開始から1年未満に発生している14)と報告されている.また,相田ら12)も来日初期の調査前半に筋骨格系の不調を報告しており,健康維持は充実した実習のために重要であるが,その能力を発揮できる環境整備が喫緊の課題である13)と指摘している.
これらの報告は,外国人技能実習生の健康問題の重要性を示しているが,理学療法士が介護研修に関与した事例や健康調査の報告はみられない.
今回,当院で外国人技能実習生の受け入れ,指導責任者である看護師の管理の元で外国人技能実習生に対して継続的に介護技術の研修を行う機会を得た.研修に合わせて健康状態の調査を行い,その経過及び経験から外国人技能実習生に対して理学療法士が関わる意義について検討したので報告する.
対象は2023年7月末に来日し,同年9月1日より当院で実習を開始したミャンマー国籍の技能実習1号の女性2名(対象者A 29歳,対象者B 30歳)とした.日本語能力は2名共N4(基本的な日本語を理解することができる)であり,対象者には調査の趣旨と方法を事前に書面にて説明し,同意を得たうえで個人情報の取り扱いには十分に留意した.
健康状態の調査期間は2023年10月から2024年4月までの間に計4回(10月,12月,2月,4月),自記式質問票にて行った.なお,日本語訳されている質問票はGoogle翻訳を用いてビルマ語に訳して使用した.
調査内容として,現在自覚する疼痛について部位,発生時期,場所,疼痛に対する治療の有無,程度(Numeric Rating Scale,以下NRS)を調査した.心理的ストレスについてはケスラー心理尺度(以下K6)を用いた.K6は抑うつ,不安に関する多数の既存のスクリーニング尺度から抽出し,その中から選ばれた6項目からなる尺度である15).過去30日間の心理的ストレス反応を測定する尺度であり,少数の項目で構成された質問紙でありながら高いスクリーニング能力を有しており,精神保健の疫学調査における精神的健康または心理的ストレス反応の標準的尺度の1つとなっている.各質問について5段階で回答し,単に点数を合計することによって0点(低ストレス)から最高で24点(高ストレス)まで算出する.評定が5点以上で何らかのうつ・不安がある可能性,13点以上で重度のうつ・不安障害が疑われ16),重度ストレスに関するK6のカットオフ値は13点17)とされている.ワーク・エンゲイジメントは,仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり,活力,熱意,没頭によって特徴づけられる.本調査では,その評価にSchaufeliらによって開発され18),島津らによって邦訳された19)日本語版のユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(Utrecht Work Engagement Scale,UWES‐J,以下UWES)の短縮版(9項目)を用いた.各下位尺度に3項目ずつ,計9項目で構成20)され,7件法(0~6点)で評価する.得点範囲は0から54点で,合計点が高いほどワーク・エンゲイジメントが高いと評価される.本尺度は十分な信頼性と妥当性を有しており19),特に短縮版は完全版(17項目)の完全版より適合性が高いことが報告されている21).
介護技術研修については,対象者の勤務スケジュールや他の研修との兼ね合いにより9月,10月,12月,2月,4月に業務時間内に1時間を目安に計5回実施し,健康状態の調査は2回目の研修から10月,12月,2月,4月の計4回実施した.研修内容の予定は,9月に介護におけるボディメカニクスと移乗・移動介助方法,10月に体位変換と床ずれについてと体位変換に伴う血圧変動,12月にバイタルの知識と車椅子の介助,2月と4月に腰痛教育と自主トレーニングとしていた.すべての研修にスライド資料を作成し,日本語文の下にビルマ語訳を記載した(図1).

対象者らは,9月1日より日本人介護職員と同様の作業内容を行っていた.具体的な内容としては,入浴・洗面介助,食事介助,排泄介助,移動・移乗介助,シーツ交換であり,人力での介助が多く,前傾姿勢やしゃがみ込んでの作業が多く,身体的労働負荷が高い業務を行っており,10月からは夜間勤務も実施していた.
第1回調査・研修(10月)
2名共に疼痛部位はなく,NRSとK6は0点でありUWESは対象者Aが47点,対象者Bが48点であった.面談時の2名の発言要旨としては,「同僚が優しく教えてくれる」や「家族のためにたくさん仕事をしたい」などを聴取できた.
第2回調査・研修(12月)
2名とも11月頃に腰痛を自覚し,発生場所はいずれも職場であったことが確認出来た.腰痛に対する治療は2名共行っていなかった.それぞれNRSは対象者Aが2,対象者Bが3であり,K6は対象者Aが0点から2点,対象者Bは0点から1点,UWESは対象者Aが47点から44点,対象者Bが48点から44点と変化がみられた.
腰痛に対して問診と運動時痛や神経学的徴候の有無などのスクリーニング検査を実施したところ,既往歴はなく発熱や夜間痛もないことからレッドフラッグには該当せず非特異的腰痛であると観察されたことから,予定していた研修内容を変更し,腰痛教育と自主トレーニングを含む腰痛体操の指導及びこれまでの研修で指導した介助方法の確認と再指導を行った.腰痛教育についてはスライドを使用し,疼痛の理解促進や活動継続の助言,Stay Activeの考え方を指導し,自主トレーニングは松平らの報告23)を参考に職場や自宅で行える簡単なものを指導した.
第3回調査・研修(2月)
それぞれ腰痛は消失しており,NRSは対象者Aが2から0,対象者Bが3から0,K6は対象者Aが2点から0点,対象者Bが1点から0点,UWESは対象者Aが44点から49点,対象者Bが44点から49点となっていた.面談時に2名共,指導した自主トレーニングを自宅や職場内で毎日欠かさず行っているとの発言を聴取できた.
第4回調査・研修(4月)
2名共NRSは0のままであり,K6は対象者Aが0点から2点,対象者Bが0点から1点,UWESは対象者Aが49点から48点,対象者Bが49点から変化はなかった.2名共に3月に受験した介護技能実習評価試験の結果を心配している旨の発言を聴取できた(表1,表2).
| 調査時期 | 2023.10 | 2023.12 | 2024.2 | 2024.4 |
|---|---|---|---|---|
| 疼痛部位 | - | 腰部 | - | - |
| 自覚時期 | - | 11月頃 | - | - |
| 発生場所 | - | 職場 | - | - |
| 治療 | - | - | 自主トレ | 自主トレ |
| NRS | 0 | 2 | 0 | 0 |
| K6 | 0 | 2 | 0 | 2 |
| UWES | 47 | 44 | 49 | 48 |
| 活力 | 17 | 14 | 17 | 15 |
| 熱意 | 18 | 17 | 16 | 17 |
| 没頭 | 12 | 13 | 16 | 16 |
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NRS: Numeric Rating Scale K6: ケスラー心理尺度 UWES: Utrecht Work Engagement Scale |
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| 調査時期 | 2023.10 | 2023.12 | 2024.2 | 2024.4 |
|---|---|---|---|---|
| 疼痛部位 | - | 腰部 | - | - |
| 自覚時期 | - | 11月頃 | - | - |
| 発生場所 | - | 職場 | - | - |
| 治療 | - | - | 自主トレ | 自主トレ |
| NRS | 0 | 3 | 0 | 0 |
| K6 | 0 | 1 | 0 | 1 |
| UWES | 48 | 44 | 49 | 49 |
| 活力 | 17 | 17 | 16 | 17 |
| 熱意 | 17 | 13 | 17 | 16 |
| 没頭 | 14 | 14 | 16 | 16 |
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NRS: Numeric Rating Scale K6: ケスラー心理尺度 UWES: Utrecht Work Engagement Scale |
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本活動報告の目的は,外国人技能実習生に対して,理学療法士が関わる意義を検討することであった.まず,理学療法士の関与と腰痛への影響について述べ,その後にK6とUWESについて述べていく.
今回の調査では11月に2名の技能実習生に腰痛の発生が認められ,それぞれNRSで0点から2点,3点へと増加していた.これに対し,理学療法士が定期的な研修を通じて継続的に関与することにより,腰痛の早期発見と早期介入が可能となった.具体的には,介助動作の確認,腰痛教育,簡便な自主トレーニングの指導などを実施した.その結果,2月には両者ともにNRSが0点となり,4月までに腰痛の再発も認められなかった.腰痛の発生時期については,来日から4カ月後にあたる11月頃であり,これは先行研究が報告する,身体的負荷の高い介護や製造業などに従事する技能実習生で,筋骨格系の不調は調査前半に多くみられた12)という報告と一致していた.非特異的腰痛のうち7割程度は4~6週で改善するが,残りの3割ほどは慢性化する可能性がある23).そのため,急性期においては過度な治療は避け,「患者教育」や「活動の継続(Stay Active)」を中心とした介入が推奨されている24).過剰な介入は患者の依存心を助長し,慢性化のリスクがあるため,介入方針には十分な配慮が求められる.また,疼痛に対する教育や生活習慣の改善など,生物心理社会モデルに基づいた介入は,腰痛の予防及び改善に有効であり,これには専門的な知識を持った理学療法士が必要である23)とされている.本事例においても,理学療法士による継続的な関りが腰痛消失や再発予防に寄与したと考えられる.さらに,介護職や看護職においては,1日の作業時間の30%が体幹屈曲位での作業のため腰痛罹患率が高い25)とされており,その対策として,立位での体幹伸展運動を用いた簡便な腰痛体操が効果的であることが報告されている26).本調査でも,簡便な自主的なトレーニングを定期的に実施したことで腰痛の改善が認められ,再発予防につながった可能性がある.加えて,理学療法士の伴走的な関与も腰痛の改善および健康の維持に寄与したと推察される.
調査を通じて得られた,対象者らの心理的ストレス(K6)は全期間を通じて軽度にとどまり,ワーク・エンゲイジメントは高い水準を維持していた.外国人技能実習生の1年間の健康を調査した相田ら12)は,K6スコアが5点未満であった者が50.0%であり,5点以上であった事例では経済的不安や職場への不満,コミュニケーションの困難などの否定的要因が,うつ・不安の可能性があった時期に経験されていたと報告している.本調査では,実習開始2か月目の10月に対象者から労働に対する前向きな発言が聴取され,こうした否定的要因は認められなかった.12月にはK6スコアがわずかに上昇(0〜2点,0〜1点)したが,いずれも5点未満であり,「同僚が優しく教えてくれる」との発言からも,職場内での十分なサポートが推察される.また,腰痛診療ガイドライン27)や関連するシステマティックレビュー28)では,心理社会的因子が腰痛の遷延や治療成績に影響を与えるとされており,本調査の対象者が心理的ストレスの少ない環境で実習を行えたことは,腰痛の早期改善や再発予防に寄与した可能性がある.
UWESは10月の時点でそれぞれ47点と48点であり,国内外の先行研究において用いられている各項目の合計値を項目数(9)で除した値である1項目あたりの得点は,5.2点および5.3点と非常に高い水準であった.国内の介護従事者を対象とした先行研究では平均2.8〜3.5点と報告されており29-32),本調査対象者の得点はこれを大きく上回っていた.その後も,12月には一時的に44点まで低下したが,1項目得点は4.8点と高水準を維持し,2月には49点に回復,4月も同様に高い水準を保っていた.ワーク・エンゲイジメントは,仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知とされ18-19),その高さは離職率の低下,組織へのコミットメントの向上,従業員の自発的行動の増加,さらには抑うつや心理的苦痛の軽減といったポジティブな成果につながることが報告されている33).また,ワーク・エンゲイジメントの規定要因としては,上司からのフィードバックや社会的支援,仕事の裁量,報酬,承認などの「仕事の資源」34-35),ならびに,目標設定や自己効力感,満足度などの「個人資源」36)が正の相関を持つとされている.これらの知見を踏まえると,本調査対象者は,実習指導責任者や同僚からの適切な支援を受ける中で,心身の健康を良好に保ちつつ,仕事や組織に対して肯定的な態度で実習に取り組むことができていたと推察される.
今回の経験を通じて,今後さらなる増加が見込まれる外国人技能実習生が,健康に過ごすうえで,理学療法士が健康支援の一領域における関与の可能性が示唆された.また,技能実習法において,技能実習生の健康と安全の確保の担い手に位置付けられているのが管理団体であるが,管理団体には健康や安全の専門知識を持つ者の選任要件がないため,技能実習生の健康と安全の確保にあたっては様々な困難がある37)と報告されている.こうした課題に対応するためにも,今後は個々の施設や企業にとどまらず,制度の中核を担う管理団体に対しても理学療法士が関わることが期待される.
課題としては,今回の調査と関りは自施設という環境で限られた時間の中で行ったため,対象者が少ないこと,他施設でも同様の効果が得られるか, 1~2年などの長期的な効果の検証が必要といった課題があると考える.加えて,文化的背景の考慮をすると,他国籍の技能実習生にも同様の効果が得られるかも課題であると考える.今回の関りは,腰痛を発症してからとなってしまったが,研修初期に腰痛教育や自主トレーニングの指導を行っていれば,腰痛の発症予防につながった可能性があり,研修内容や実施時期の再検討が必要である.本調査では,日本語版で妥当性が確認されているK6およびUWESを用いて評価を行ったが,ビルマ語版の質問紙はGoogle翻訳を用いて作成したものであり,現時点では言語的・文化的妥当性の正式な検証は行われていない.この点は,尺度の結果解釈や本調査の信頼性に一定の限界をもたらす可能性がある.特に,ミャンマーにおける文化的背景や言語構造との整合性が十分に検討されていないため,評価結果については慎重に扱う必要がある.したがって,本調査の成果はあくまで予備的な活動報告の意義に留まる.

開示すべき利益相反はない.
本調査にあたり,快くご協力いただいた技能実習生のお二人に心より感謝申し上げます.