日本産業保健理学療法学雑誌
Online ISSN : 2758-4798
原著論文
定年延長制度導入に向けた消防職員の健康・業務不安に関する基礎的知見
稲垣 郁哉 矢嶋 昌英本橋 みどり森田 悠介浅岡 祐之川﨑 慧千葉 佳裕伊東 順太佐々木 達也鈴木 貴之今野 淳一綿貫 健一西澤 雄人工藤 昌弘
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2025 年 3 巻 2 号 p. 26-35

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Abstract

【目的】定年延長制度導入に向けた消防職員の健康・業務不安の実態を年代別・職務別に把握した.

【方法】関東A消防組合で横断調査とした.有効回答は138名(本部30名,現場108名)であった.既往歴・現病歴・投薬の有無,身体負担の有無と部位,業務不安の有無とNRS(Numeric Rating Scale),不安内容を収集し記述した.

【結果】全体の既往歴ありは33.3%,現病歴ありは19.6%,投薬ありは15.2%であった.身体負担は52.2%(腰部34.8%,肩甲帯13.8%,頸部13.0%)であった.不安は36.2%あり,NRS 0[0–3]であった.30歳代は外傷歴,40–50歳代は高血圧・脂質異常,60歳代に糖尿病が多く,40歳代以降で肩甲帯・臀部の負担が多かった.職務別では本部職員で既往歴・現病歴・投薬ありと頸部負担・不安が高く,現場では腰部・大腿部が多かった.

【結論】年代および職務でプロファイルが異なる.定年延長に向け,本部職員の座位行動・頸部対策と現場職員の腰部中心の予防を核に,理学療法士参画の層別化・統合的健康管理が有用であると考える.

Translated Abstract

Purpose: To describe health status and job-related anxiety among firefighters by age group and job type in the context of Japan’s extended retirement policy.

Methods: We collected medical history, current disease, and medication use; presence and sites of bodily burden; and job-related anxiety (presence; intensity by Numeric Rating Scale [NRS], 0–10; free-text content coded into categories). Descriptive statistics were summarized overall, by age, and by job type.

Results: Medical history, current disease, and medication use were reported by 33.3%, 19.6%, and 15.2%, respectively. Bodily burden was present in 52.2%, most commonly low back (34.8%), shoulder girdle (13.8%), and neck (13.0%). Job-related anxiety was present in 36.2%, with intensity median [IQR] 0 [0–3]. Age patterns showed more trauma history in the 30s; hypertension/dyslipidemia in the 40s–50s; and diabetes in the 60s (small cell). Shoulder-girdle and gluteal burden were relatively more frequent from the 40s onward. By job type, headquarters staff had higher proportions of medical history/current disease/medication, more neck burden, and higher prevalence/intensity of anxiety, whereas field staff more often reported low-back and thigh burden.

Conclusions: Health and anxiety profiles differ by age and job type. In preparation for extended retirement, a stratified, integrated health strategy is warranted—prioritizing reduction of sedentariness and neck strain in headquarters, and lumbar-focused musculoskeletal prevention for field crews—with physical therapists embedded in program design and follow-up.

はじめに

地方公務員法の改正により,令和5年度から消防職員を含む地方公務員の定年が65歳まで2年に1歳ずつ引き上げられることとなり,役職定年制などの諸制度が整備された1).この改正は,少子高齢化が進展する中,60歳以上の職員(以下,高齢期職員)が能力を最大限活かし,行政課題の解決に努めることを目的としている2).しかし,消防業務は現場活動が主であり,高齢期職員の加齢に伴う身体機能の低下や健康状態の悪化が,業務遂行に支障をきたす可能性が懸念される.特に,瞬発力や持久力を要する救助・消火活動では,高齢職員の身体的負担が大きくなることが予想される.また,高齢期職員の多くは管理職として長期間現場を離れているが,今後の制度変更により,災害現場対応業務に再び従事する可能性も指摘されている1).そのため,年齢別だけでなく,職務別(本部職員・現場職員)における健康状態や心理面の比較が重要となる.先行研究では,笠見ら34)が消防職員の高年齢者における現場活動能力や心理面を調査し,定年引き上げを見据えた現状を報告している.また,消防職員の健康リスクや心理的負担に関する研究では,餅原ら5)が消防職員の災害ストレスの予防とケアの重要性を報告しており,横山ら6)は勤務形態や職務による心理的ストレス反応の差異を報告している.しかし,本部職員と現場職員という職務特性の違いと,若年層から高年層までのそれぞれの年代による特徴を捉え,健康状態と心理面(特に業務不安)を包括的に比較した報告は限られている.消防士は一般人より高血圧の割合が高いと報告されていることから7),年齢が上がるにつれ,また,本部職員と比べて現場職員で循環器疾患が多いこと,さらには,本部職員と現場職員では職務特性の違いから身体的負担部位が異なると考えられる.特に地方公務員法の改定により,今後を想定した様々な業務不安が高まることが予想される.そのため定年延長下では,高齢期職員のみならず若年・中年期からの基礎データ整備が将来の配置設計・職務再設計に不可欠である.

このような背景のもと,理学療法士(以下,PT)が消防組織に関与する意義は大きいと考える.PTは,筋骨格系機能評価に基づく個別運動処方,作業姿勢・装備へのエルゴノミクス指導,腰痛など慢性障害の早期介入,持久力・筋力・柔軟性を高める体力プログラムの設計・実施などの専門性を有する.したがって,年代別と職務別の視点で健康・心理プロファイルを把握し,PT介入の優先領域を特定することは,定年延長制度導入に向けた消防力維持に直結する実務的課題といえる.

そこで,本研究では,関東地方のA消防組合の職員を対象に,健康状態と業務不安に着目し,年代別および職務別(本部職員・現場職員)の比較を行うことを目的とした. この調査結果は,消防職員の定年引き上げに伴う健康管理の課題を明らかにし,今後の人材配置や職務適応に関する政策的示唆を与えることが期待される.

方法

対象は,関東地方のA消防組合の本部職員34名と現場職員131名の全職員165名とした.調査期間は2024年6月22日〜2024年7月8日とした.組み入れ基準は調査期間に常勤職員として在籍していた者,配属が本部または現場に該当する者,研究趣旨の説明後に書面にて参加同意の得られた者とした.除外基準は,同意の得られなかった者,年齢や性別、所属などの属性因子が未回答の者とした.

本研究は,対象者に対して健康状態と業務不安についてのアンケート調査を横断的に実施した(図1).質問紙は先行研究8)を参考に著者が作成した.健康状態では,既往歴・現病歴・投薬の有無について自由記載とし,身体負担の有無はあり・なしの二値変数とし,部位は身体の図表から部位に該当する番号を複数選択可とした.業務不安に関しては,先行研究6)の網羅的スクリーニングよりも,介入設計に直結する特異的情報の抽出を優先した.具体的には,不安の強度は数値評定尺度(Numeric Rating Scale: NRS)を用いて評価した.0=不安なし,10=これまでで最も強い不安と定義し,0〜10の11件法で回答を得た.不安内容は自由記載とした.自由記載は内容分析により,名義カテゴリにコーディングした上で名義尺度として扱った.なお,欠損値の扱いは,主要変数(既往歴・現病歴・投薬の有無,身体負担の有無,業務不安の有無・NRS)に真正の欠損を認めた場合とし,下位設問(負担部位,不安内容)の空欄はスキップ設計による該当なし(N/A)とみなし欠損に含めないこととした.

図1 実施したアンケート用紙(簡略版)

統計解析は,記述統計量の算出後(年齢は平均値・標準偏差,健康状態は各疾患と投薬の割合,身体負担は有無の割合・身体部位の割合,業務不安は有無の割合・NRSの中央値[四分位範囲]・不安内容の割合で示した.また割合には95%信頼区間を付した),年代間や職務間の比較として,順序尺度の項目で,職務間はMann-WhitneyのU検定を実施,年代間はKruskal-Wallis検定の後,多重比較法としてBonferroni法を実施した.名義尺度の項目はクロス集計表において期待度数が5未満のセルが20%未満の場合はχ²独立性の検定後,調整済み残差による頻度の差を確認し,期待度数が5未満のセルが20%以上の場合はFisherの正確確率検定を実施後,調整済み残差による頻度の差を確認した.またFisherの正確確率検定にて,クロス集計表のサイズが大きく,完全列挙が困難と判断された比較は,モンテカルロ法(サンプル数:10,000)を実施した.有意水準は5%とし,統計解析はIBM SPSS statistics ver. 29(IBM Corp, Armonk, NY)を使用した.

本研究は,日本医療科学大学研究倫理委員会で承認を受けて実施した(承認番号:2024003).対象者には本研究の意義と内容を十分に説明した.特に自由意志による参加であること,参加または不参加により待遇に不利益が生じないこと,同意撤回の自由については書面および口頭にて十分に説明し,同意を得たうえで実施した.

結果

アンケート調査の回収率は98.7%(163/165名)であり,そのうち除外基準を除く有効回答率は83.6%(138/165名)であった.対象者の属性は本部職員30名(平均年齢41.8±10.1歳)と現場職員108名(平均年齢34.5±12.0歳)であった(表1).

表1 対象者の基本属性

n(%) 平均年齢
総数 138(100.0) 36.2 ± 12.0
年齢
 10歳代 7(5.1) 18.7 ± 0.5
 20歳代 49(35.5) 24.8 ± 2.6
 30歳代 33(23.9) 35.6 ± 2.5
 40歳代 19(13.8) 46.2 ± 3.5
 50歳代 27(19.6) 52.1 ± 2.1
 60歳代 3(2.2) 60.1 ± 0.9
職務
 本部職員 30(21.7) 41.8 ± 10.1
 現場職員 108(78.2) 34.5 ± 12.0

全職員の健康状態では,既往歴あり33.3%,現病歴あり19.6%,投薬あり15.2%であった.主要内訳は高血圧(既往歴9.4%,現病歴8.7%,投薬8.0%)と脂質異常症(既往歴4.3%,現病歴4.3%,投薬3.6%)であった(表2).身体負担は52.2%が有しており,部位は腰痛34.8%で最多であり,ついで肩甲帯が13.8%,頸部が13.0%であった.業務不安は36.2%が不安を感じており,不安強度はNRS中央値0[四分位範囲0-3]であった.不安内容は腰痛6.5%,体力3.6%,睡眠不足2.9%であった(表3).

年代別の健康状態では,既往歴あり・現病歴あり・投薬ありはいずれも30歳代以上で多かった.特徴的な内訳として,30歳代は骨折・靭帯損傷・ヘルニア,40歳代は高血圧,50歳代は高血圧・脂質異常症・腰痛,60歳代は糖尿病(n=3)であった(表2).身体負担は年代別の有意差は認められなかったが,頸部や肩甲帯は30歳代以降に多く,40歳代と60歳代に臀部が多いのも特徴的であった.業務不安は30歳代以降に多く,不安強度は40歳代以降で高まり,30〜50歳代での腰痛や60歳代での体力に関する不安の割合が高かった(表3).

表2 年代別における健康状態について

  全体 10歳代 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代
既往歴なし 92
(66.7)
6
(85.7)
44
(89.8)
17
(51.5)
11
(57.9)
13
(48.1)
1
(33.3)
既往歴あり 46
(33.3)
1
(14.3)
5
(10.2)
16
(48.5)
8
(42.1)
14
(51.9)
2
(66.7)
高血圧 13
(9.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.0)
4
(21.1)
7
(25.9)
1
(33.3)
脂質異常症 6
(4.3)
0
(0.0)
1
(2.0)
0
(0.0)
2
(10.5)
3
(11.1)
0
(0.0)
腰痛 3
(2.2)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.0)
0
(0.0)
2
(7.4)
0
(0.0)
ヘルニア 3
(2.2)
0
(0.0)
0
(0.0)
2
(6.1)
1
(5.3)
0
(0.0)
0
(0.0)
靭帯損傷 3
(2.2)
1
(14.3)
0
(0.0)
2
(6.1)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
糖尿病 2
(1.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
1
(33.3)
不整脈 2
(1.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
腰椎分離症 2
(1.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
骨折 2
(1.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
2
(6.1)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
花粉症 2
(1.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(5.3)
1
(3.7)
0
(0.0)
心筋梗塞 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
上室性頻拍 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
脂肪肝 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
高尿酸血症 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
アキレス腱断裂 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
現病歴なし 111
(80.4)
7
(100.0)
47
(95.9)
31
(93.9)
12
(63.2)
13
(48.1)
1
(33.3)
現病歴あり 27
(19.6)
0
(0.0)
2
(4.1)
2
(6.1)
7
(36.8)
14
(51.9)
2
(66.7)
高血圧 12
(8.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
4
(21.1)
8
(29.6)
0
(0.0)
脂質異常症 6
(4.3)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
2
(10.5)
4
(14.8)
0
(0.0)
糖尿病 3
(2.2)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
2
(66.7)
腰痛 2
(1.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
2
(7.4)
0
(0.0)
高尿酸血症 2
(1.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
2
(7.4)
0
(0.0)
心筋梗塞 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
上室性頻拍 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
脂肪肝 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
食道炎 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(5.3)
1
(3.7)
0
(0.0)
ヘルニア 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
花粉症 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(5.3)
0
(0.0)
0
(0.0)
投薬なし 117
(84.8)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(33.3)
投薬あり 21
(15.2)
0
(0.0)
1
(2.0)
1
(3.0)
5
(26.3)
12
(44.4)
2
(66.7)
高血圧 11
(8.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
4
(21.1)
7
(25.9)
0
(0.0)
脂質異常症 5
(3.6)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(5.3)
4
(14.8)
0
(0.0)
コレステロール 3
(2.2)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(5.3)
2
(7.4)
0
(0.0)
高尿酸血症 2
(1.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
2
(7.4)
0
(0.0)
糖尿病 2
(1.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
1
(33.3)
花粉症 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)

*:Fisher検定 p<0.01 調整済み残差で他群より有意に多い回答,†:Fisher検定 p<0.01 調整済み残差で他群より有意に少ない回答

単位:人(%)

表3 年代別における身体負担と業務不安について

  全体 10歳代 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代
身体負担なし 66
(47.8)
6
(85.7)
32
(65.3)
11
(33.3)
6
(31.6)
11
(40.7)
0
(0.0)
身体負担あり 72
(52.2)
1
(14.3)
17
(34.7)
22
(66.7)
13
(68.4)
16
(59.3)
3
(100.0)
頸部 18
(13.0)
0
(0.0)
2
(4.1)
5
(15.2)
5
(26.3)
5
(18.5)
1
(33.3)
胸部 0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
腹部 2
(1.4)
0
(0.0)
1
(2.0)
0
(0.0)
1
(5.3)
0
(0.0)
0
(0.0)
肩甲帯 19
(13.8)
0
(0.0)
0
(0.0)††
4
(12.1)
4
(21.1)
9
(33.3)
2
(66.7)
背部 2
(1.4)
1
(14.3)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
2
(7.4)
0
(0.0)
腰部 48
(34.8)
0
(0.0)
12
(24.5)
11
(33.3)
10
(52.6)
12
(44.4)
2
(66.7)
臀部 14
(10.1)
0
(0.0)
0
(0.0)††
4
(12.1)
4
(21.1)
2
(7.4)
2
(66.7)
上腕 5
(3.6)
0
(0.0)
2
(4.1)
0
(0.0)
1
(5.3)
2
(7.4)
0
(0.0)
前腕 3
(2.2)
0
(0.0)
2
(4.1)
0
(0.0)
1
(5.3)
0
(0.0)
0
(0.0)
大腿 13
(9.4)
0
(0.0)
1
(2.0)
7
(21.2)
3
(15.8)
2
(7.4)
0
(0.0)
下腿 10
(7.2)
0
(0.0)
2
(4.1)
4
(12.1)
1
(5.3)
2
(7.4)
1
(33.3)
業務不安なし 88
(63.8)
6
(85.7)
39
(79.6)
23
(69.7)
9
(47.4)
12
(37.0)
1
(33.3)
業務不安あり 50
(36.2)
1
(14.3)
10
(20.4)††
10
(30.3)
10
(52.6)
17
(63.0)
2
(66.7)
不安の程度 0[0-3] 0[0-0] 0[0-0] 0[0-2] 2[0-5] 2[0-5] 5[2.5-5.5]
メンタルヘルス 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
視力 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
脚力 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(5.3)
0
(0.0)
0
(0.0)
血圧 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(5.3)
0
(0.0)
0
(0.0)
職務難易度 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
職務遂行思考 3
(2.2)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
2
(10.5)
1
(3.7)
0
(0.0)
足痛 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
膝痛 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
腰痛 9
(6.5)
0
(0.0)
1
(2.0)
4
(12.1)
2
(10.5)
2
(7.4)
0
(0.0)
体調 2
(1.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
監督業務 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
ストレス 2
(1.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(5.3)
1
(3.7)
0
(0.0)
怪我 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
持久力 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
睡眠不足 4
(2.9)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.0)
1
(5.3)
2
(7.4)
0
(0.0)
運動不足 1
(0.7)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(3.7)
0
(0.0)
体力 5
(3.6)
0
(0.0)
0
(0.0)††
1
(3.0)††
1
(5.3)
1
(3.7)††
2
(66.7)
全て 2
(1.4)
0
(0.0)
0
(0.0)
0
(0.0)
1
(5.3)
1
(3.7)
0
(0.0)

*:Fisher検定 p<0.01 調整済み残差で他群より有意に多かった回答

††:Fisher検定 p<0.01 調整済み残差で他群より有意に少なかった回答

†:Bonferroni法による多重比較 p<0.05

単位:人(%)

不安の程度のみ中央値[四分位範囲]

職務別の健康状態では,本部職員は既往歴あり56.7%(95%信頼区間:39.2-72.6%),現病歴あり33.3%(95%信頼区間:19.2-51.2%),投薬あり30.0%(95%信頼区間:16.7-47.9%)で,現場職員の既往歴あり26.9%(95%信頼区間:19.4-35.9%),現病歴あり15.7%(95%信頼区間:10.1-23.8%),投薬あり11.1%(95%信頼区間:6.5-18.4%)より高かった(p=0.003,p=0.033,p=0.015).内訳として,本部職員と現場職員ともに高血圧が最も多く,次いで脂質異常症であった(表4).身体負担の有無に職務間の差は認められなかったが,本部職員が60.0%,現場職員が50.0%であった.また負担部位では,本部職員は頸部,現場職員は腰部が多く,頸部では本部職員が33.3%(95%信頼区間:19.2-51.2%)で,現場職員は7.4%(95%信頼区間:3.8-13.9%)で差が認められた(p=0.001)(表5).業務不安は,本部職員で56.7%(95%信頼区間:39.1-72.6%),現場職員で30.6%(95%信頼区間:22.7-39.8%)と差が認められ(p=0.014),不安強度も本部職員はNRS 2[0-5]で,現場職員のNRS 0[0-2.3]より高かった(p=0.004).内容は,本部職員で腰痛・ストレス・睡眠不足に不安を抱えており,現場職員では腰痛,体力に不安を抱えていた(表5).

表4 業務別における健康状態について

  全体 本部職員 現場職員
既往歴なし 92(66.7) 13(43.3) 79(73.1)
既往歴あり 46(33.3) 17(56.7)** 29(26.9)
高血圧 13(9.4) 6(20.0) 7(6.5)
脂質異常症 6(4.3) 3(10.0) 3(2.8)
腰痛 3(2.2) 0(0.0) 3(2.8)
ヘルニア 3(2.2) 2(6.7) 1(0.9)
靭帯損傷 3(2.2) 1(3.3) 2(1.9)
糖尿病 2(1.4) 1(3.3) 1(0.9)
不整脈 2(1.4) 1(3.3) 1(0.9)
腰椎分離症 2(1.4) 0(0.0) 2(1.9)
骨折 2(1.4) 1(3.3) 1(0.9)
花粉症 2(1.4) 1(3.3) 1(0.9)
心筋梗塞 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)
上室性頻拍 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)
脂肪肝 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)
高尿酸血症 1(0.7) 0(0.0) 1(0.9)
アキレス腱断裂 1(0.7) 0(0.0) 1(0.9)
現病歴なし 111(80.4) 20(66.7) 91(84.3)
現病歴あり 27(19.6) 10(33.3) 17(15.7)
高血圧 12(8.7) 5(16.7) 7(6.5)
脂質異常症 6(4.3) 3(10.0) 3(2.8)
糖尿病 3(2.2) 1(3.3) 2(1.9)
腰痛 2(1.4) 0(0.0) 2(1.9)
高尿酸血症 2(1.4) 0(0.0) 2(1.9)
心筋梗塞 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)
上室性頻拍 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)
脂肪肝 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)
食道炎 1(0.7) 0(0.0) 1(0.9)
ヘルニア 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)
花粉症 1(0.7) 0(0.0) 1(0.9)
投薬なし 117(84.8) 21(70.0) 96(88.9)
投薬あり 21(15.2) 9(30.0) 12(11.1)
高血圧 11(8.0) 5(16.7) 6(5.6)
脂質異常症 5(3.6) 2(6.7) 3(2.8)
コレステロール 3(2.2) 2(6.7) 1(0.9)
高尿酸血症 2(1.4) 0(0.0) 2(1.9)
糖尿病 2(1.4) 1(3.3) 1(0.9)
花粉症 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)

*:χ2検定 p<0.05 調整済み残差で他群より有意に多い回答,

**:χ2検定 p<0.01 調整済み残差で他群より有意に多い回答

†:Fisher検定 p<0.05 調整済み残差で他群より有意に多い回答

単位:人(%)

表5 業務別における身体負担と業務不安について

  全体 本部職員 現場職員
身体負担なし 66(47.8) 12(40.0) 54(50.0)
身体負担あり 72(52.2) 18(60.0) 54(50.0)
頸部 18(13.0) 10(33.3) 8(7.4)
胸部 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0)
腹部 2(1.4) 0(0.0) 2(1.9)
肩甲帯 19(13.8) 6(20.0) 13(12.0)
背部 2(1.4) 0(0.0) 2(1.9)
腰部 48(34.8) 10(33.3) 38(35.2)
臀部 14(10.1) 4(13.3) 10(9.3)
上腕 5(3.6) 0(0.0) 5(4.6)
前腕 3(2.2) 0(0.0) 3(2.8)
大腿 13(9.4) 2(6.7) 11(10.2)
下腿 10(7.2) 3(10.0) 7(6.5)
業務不安なし 88(63.8) 13(43.3) 75(69.4)
業務不安あり 50(36.2) 17(56.7) 33(30.6)
不安の程度 0[0-3] 2[0-5]** 0[0-2.3]
メンタルヘルス 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)
視力 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)
脚力 1(0.7) 0(0.0) 1(0.9)
血圧 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)
職務難易度 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)
職務遂行思考 3(2.2) 2(6.7) 1(0.9)
足痛 1(0.7) 0(0.0) 1(0.9)
膝痛 1(0.7) 0(0.0) 1(0.9)
腰痛 9(6.5) 2(6.7) 7(6.5)
体調 2(1.4) 1(3.3) 1(0.9)
監督業務 1(0.7) 0(0.0) 1(0.9)
ストレス 2(1.4) 2(6.7) 0(0.0)
怪我 1(0.7) 0(0.0) 1(0.9)
持久力 1(0.7) 0(0.0) 1(0.9)
睡眠不足 4(2.9) 2(6.7) 2(1.9)
運動不足 1(0.7) 1(3.3) 0(0.0)
体力 5(3.6) 0(0.0) 5(4.5)
全て 2(1.4) 1(3.3) 1(0.9)

*:χ2検定 p<0.05 調整済み残差で他群より有意に多かった回答

†:Fisher検定 p<0.01 調整済み残差で他群より有意に多かった回答

**: Mann-WhitneyのU検定 p<0.01

単位:人(%)

不安の程度のみ中央値[四分位範囲]

考察

本研究では,消防職員の健康状態と業務不安について年代別・職務別の比較を行い,年代や職務特性による基礎的知見を記述的に把握した.

まず全体像として,既往歴あり33.3%,現病歴あり19.6%,投薬あり15.2%と,生活習慣病関連の負荷を有する層が一定割合存在したこと,身体負担を有する者が52.2%と筋骨格系の訴えが過半数に及んだこと,さらに業務不安ありが36.2%で,不安の強度は0[0–3]と中央値では低いが,集団の一部には不安を抱える層が存在することが確認された.負担部位別の訴えは腰部34.8%が最多で,肩甲帯13.8%,頸部13.0%が続き,不安内容としては腰痛6.5%,体力3.6%,睡眠不足2.9%が挙げられた.これらの分布は,循環器・代謝リスク(既往歴あり・現病歴あり・投薬あり),筋骨格系負担,業務不安が同一集団内で併存し得ることを示し,健康管理を疾患ごとの縦割りでなく,年代別や職務別などの統合的な視点で設計する必要性を裏づける必要性が考えられる.

年代別の分布からは,10歳代・20歳代で既往歴あり・現病歴あり・投薬ありが少なく,30歳代以降で多いという年齢勾配が明瞭であった.内訳として30歳代では骨折・靭帯損傷・ヘルニアがみられ,若年~壮年期における外傷や機械的負荷の痕跡が示唆された.一方で40歳代では高血圧の既往歴が多く,50歳代では高血圧・脂質異常症・腰痛の既往歴に加え,現病歴でも高血圧・脂質異常症・高尿酸血症が並び,60歳代では糖尿病の現病歴と投薬が特徴的であった.ただし,これらの年代における違いは一般人口でも広く報告される現象であり9),本研究の横断的データのみから消防職員の過酷な勤務環境が直接的に健康悪化をもたらしたと結論づけることはできない.長期間の交代勤務やストレス負荷の高い業務が心血管疾患のリスクを高めることが指摘されているが10),因果の検証には今後更なる研究が必要である.さらに,60歳代は対象が3名と少数で推定のため不確実性が大きく,本データでは相対的に高めに観察された可能性も拭えない.身体負担の有無には年代別で有意差はなかったが,負担部位として肩甲帯は40歳代以降で多く,臀部の負担は40歳代と60歳代で相対的に多いという部位の偏りがみられた.これは,長年の業務による負担の蓄積や,加齢に伴う筋力低下が影響している可能性があることを示唆する3).特に,消防業務では重装備を着用する機会が多く,長時間の活動による慢性的な負担がかかる一因は考えられる11).業務不安では,業務不安は30歳代以降で多い傾向を示し,とくに50歳代で不安の強度が高く,60歳代では「体力」に対する不安が多かったが,60歳代の所見は少数ゆえ探索的所見として解釈すべきである.

職務別では,本部職員で既往歴あり・現病歴あり・投薬ありが多く,頸部負担も多いこと,さらに業務不安の保有率・強度が高く,「ストレス」の訴えが多いことが記述的に示された.これは本部職員の平均年齢は41.8歳で,現場職員の平均年齢34.5歳より高いことが大きな要因の1つに挙げられる.それに加え本部職員は,デスクワーク中心の業務に起因する代謝の低下12)や頸部負担13)および管理・調整業務特有の心理的負荷6)が重層的に作用しているためだと考えられる.一方,現場職員では腰部や大腿といった荷重・搬送・姿勢保持に関わる部位の訴えが目立ち,装備重量や不規則勤務,熱負荷などの現場に起因する身体的ストレスの偏りがうかがえる1011).なお,不安内容「ストレス」について本部職員の報告が多かった点は,本部職員2名・現場職員0名という非常に小さな計数に基づくものであり,本所見は仮説生成的に位置づけるのが適切である.重要なのは,割合の分布そのものとして読み取れる点であり,職務特性に応じた健康管理の優先順位を記述疫学の枠内で明瞭に示していることである.業務不安に関しては,本部職員の方が不安を強く感じており,またストレスを感じている割合も高かった.これは,現場職員に比べて管理業務や組織運営に関する責任が大きく,心理的負担が増加している可能性を示唆する14).また,今回の地方公務員法の改正により,本部職員は再び災害現場対応業務に従事する可能性があることから,より今後の将来的な不安も加味されているとも考えられる.

本研究の限界として,対象集団は年齢構成に偏りがある点である.令和5年から定年年齢が60歳から65歳と段階的に引き上げられている最中であるため,60歳代の回答者が3名と非常に少ない.そのため,この年代に関する結果は過大評価されている可能性は否定できない.結果の代表性・一般化可能性には注意が必要なため,今後も継続的にデータを収集して本研究の信頼性と妥当性を検証することが重要となる.また,本研究は横断的調査であり,健康状態や業務不安の変化を長期的に追跡したものではないため,因果推論はできない.今後は,縦断的に変化を把握し,また介入研究を通じて健康状態や業務不安の変化を検証する必要がある.

本研究の結果から,消防職員の健康管理において,年代別および職務別の特性を考慮したアプローチが必要であることが示された.この特性は,PTを中核とした実務的な介入設計を後押しする.すなわち,40–50歳代を主対象に循環器・代謝の一次予防を体系化し912),全世代に対して腰部を中心とする筋骨格系二次予防を標準化する.加えて,本部職員に対しては座位行動の是正,エルゴノミクス最適化,頸部・肩甲帯の負担軽減エクササイズ,ストレスマネジメントに組み込むことが重要であると考える.現場職員に対しては,搬送・姿勢保持・熱環境を念頭に,体幹・股関節周囲の機能改善,動的ウォームアップやストレッチを検討する.これらを年代や職務の層別で実装し,負傷率・欠勤日数・バイタルサイン・頸部/腰部の症状スコア・業務不安等を継続的にモニタリングすれば,今回明らかになった記述的内容が介入後にどのように変容するか検証可能である.そして我々はそのような課題に対して,地域連携プラットフォームの活動を通じて取り組んでおり15),PTとしての知識や経験を活用できる場であると考えている.本研究で,改めて現状の課題を認識し,消防職員が継続的に活動を従事できるように支えていきたいと考えている.

利益相反

本研究における利益相反はない.本研究は日本医療科学大学における2024年度学長特別研究費の助成を受けて実施した.

謝辞

本研究にご協力くださいました坂戸・鶴ヶ島消防組合職員の皆様,イオンタウン株式会社,イオンリテール株式会社の皆様に,心より感謝申し上げます.

References
 
© 2026 日本産業理学療法研究会
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