日本小児呼吸器疾患学会雑誌
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先天性嚢胞性腺腫様肺奇形の手術適応と手術時期の検討
特に外科的視点から
岡崎 任晴末吉 亮川嶋 一成加藤 善史田中 利隆竹田 省東海林 宏道清水 俊明山高 篤行
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2008 年 19 巻 1 号 p. 18-23

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抄録

[目的] 当科での先天性嚢胞性腺腫様肺奇形 (以下, CCAM) の経験をもとに, その治療方針について特に外科的視点から検討した。
[方法] 対象は1990年から2007年に当科で経験したCCAM18例。A群: 胎児診断 (+) ・生後有症状・手術施行, B群: 胎児診断 (+) ・生後無症状・手術施行, C群: 胎児診断 (+) ・生後無症状・無治療, D群: 胎児診断 (-)・新生児期発症・手術施行, E群: 胎児診断 (-) ・乳児期以降発症・手術施行, に分け検討した。また, 手術を施行したA, B, D, E群に関して, 新生児期手術施行9例 (N群) と乳児期以降手術施行6例 (I群), また肺炎既往なし11例 (P [-] 群) と肺炎既往あり4例 (P [+] 群) とし, 手術時間と術中の体重あたりの出血量を比較した。
[結果] 18例の内訳は, A群5例 (Stocker I型3例, II型1例, III型1例), B群4例 (I型2例, II型2例), C群3例 (II型2例, III型1例), D群2例 (I型1例, II型1例), E群4例 (I型1例, II型3例) 。A群は全例生後1日以内に呼吸症状を呈し, 新生時期に手術 (肺葉切除4例, 部分切除1例) を施行した。B群は, 2例で画像上病変の増大を認めたため新生時期に, 残る2例は無変化だったが新生時期と3歳時に肺葉切除を施行した。C群3例は, 病変は残存するが無症状で観察中 (4カ月~3年2カ月) である。D群2例では新生時期, 1カ月時に肺葉切除を施行した。E群4例は2~7歳 (平均4.5歳) に肺炎で発症, 本症診断までの肺炎の既往は, 1回が2例, 2回と3回が1例ずつであった。術式は肺葉切除2例, 部分切除2例で, 術中癒着を認めたが剥離操作は可能であった。後者の1例で再発し, 肺葉切除を施行した。N群, I群, P [-] 群およびP [+] での手術時間と術中の体重あたりの出血量は, 各々N群: 181±96分・7.1±9.4ml/kg, I群: 199±53分・7.2±4.1ml/kg, P [-] 群: 172±88分・6.2±5.7ml/kg, P [+]: 232±19分・7.3±3.3ml/kgで有意差はなかった。手術例において, 術中術後に主要な合併症はなかった。16例が生存し経過良好である。死亡例2例はいずれもA群で, 胎児水腫が出生時まで存在した症例である。悪性腫瘍の合併はなかった。
[結語] 以上の結果より, 新生児期, 乳幼児期いずれでも, また肺炎の既往に関わらず, 手術は安全に施行し得る。手術適応は症状出現時または画像上病変増大時, 術式は罹患肺葉切除が推奨される。無症状例の手術適応・時期の決定には, 悪性腫瘍の発生頻度・年齢などの検討が必要であろう。

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