抄録
視聴者が動画に注意を向けるほど,動画とは無関係なプローブ刺激に対する事象関連電位のP3 (P300) 成分の振幅が減衰する。本研究では,短い動画に対する主観的興味と脳波測度との相関を求めることにより,この知見を追試・拡張した。15名の大学生・大学院生が映画の予告編12本 (M = 143 s) を視聴した。視聴中に,痛みのない電気プローブ刺激 (0.2 ms) を左手中指に5--7 s間隔で提示し,左手親指によるボタン押し反応を求めた。それぞれの予告編について印象評定を行った。6項目 (興味ある,注意を引く,好き,快,目が覚めた,本編が見たい) のヴィジュアルアナログスケールの合成得点を“興味”得点として使用した。ステップワイズ回帰分析により,プローブ誘発P3振幅 (β = -.20) と刺激が提示されない区間の後頭部アルファ帯域パワー (β = -.29) はどちらも興味得点を説明することが分かった。本研究により,単一電気プローブ刺激法が視聴者の興味を客観的に測る実験プロトコルとして有望であることが示された。