論文ID: 2504re
予期した刺激が提示されない場合,複数の事象関連電位 (event-related potential: ERP) が生じる。このことは1960年代から知られており,ERPには内因性成分があることの証拠として用いられてきた。本稿では,それらの内因性成分を欠落刺激電位 (omitted stimulus potential: OSP) と呼ぶ。OSPは感覚入力がない状況で生じるため,脳の予測メカニズムを探るうえで独自の手段を提供する。本稿では,OSPの基本的性質を概説し,OSP研究で用いられる一般的な実験パラダイムを紹介する。また,OSPの変動要因についての知見を整理し,予測や予測誤差の枠組みからOSPの理論的解釈を提示する。最後に,今後のOSP研究の方向性を示す。