抄録
本研究では画像刺激の弁別反応課題を用いて中性および不快「人物」刺激に対する反応時間 (RT) と事象関連脳電位 (ERPs) を記録し, 不快情動のRT遅延効果を検討した.課題は「人物」に対してボタン押しを求めるGo/Nogo課題と, 刺激弁別の難易がRTに及ぼす効果を排除するため, 「人物」に対するボタン押しの手がかりを「自動車」に定めたStoP/NostoP課題を設けた.その結果, 両課題条件下で不快刺激に対してRTが遅延した.Go/Nogo課題条件下では不快刺激に対するRT遅延とP3潜時延長の間に正の相関が認められたことから, Go∠Nogo課題条件下の不快刺激に対するRTの遅延は刺激評価処理の遅れに起因するものと考えられる.一方, StoP/NostoP課題条件下ではP3潜時に刺激条件の差が認められなかった.また, 刺激や課題の条件間の差はP2やN2に観察された.さらに, 両課題条件下で不快刺激に対してP3振幅は増大した.しかしながら, これらのERPの変化とRT遅延との相関は認められなかった.したがって, 不快情動は反応出力処理過程に影響を及ぼすものと推察される.