小児理学療法学
Online ISSN : 2758-6456
家族・学校
人工呼吸器を装着した小児の小学校入学支援
大場 蕗子小篠 史郎
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2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 105

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抄録

【はじめに、目的】

平成25年の学校教育法施行令の改正により、障害の状態や本人の教育的ニーズ等を踏まえ、総合的な観点か ら就学先決定を行うよう改められた。また、令和3年6月に「医療 的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」の成立に伴い、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関し、国、地方公共団 体等の責務が明らかにされた。現在、小学校に入学する医療的ケア児が増加傾向にある。小児在宅医療支援センター (以下、当セ ンター)は医療的ケア児の入学支援等を行っており、今回、24時間気切下人工呼吸器を装着した小児の小学校入学支援を通し、地域の教育委員会 (以下、教育委員会)や学校と連携 した事例を報告する。

【方法および症例報告】

支援開始時、対象児は5歳。現病歴はミトコンドリア病で既往に低酸素脳症あり。医療的ケアは、人工呼吸器管理、吸引、排痰補助装置、胃ろう注入、導尿 (月1回程度)、てんかん発作時の坐薬挿入。身体機能は、重症心身障がい児であり随意運動は眼球運動可。自発呼吸はほぼ無し。 ADL全介助。

【結果および経過】

入学1年5カ月前、両親は教育委員会に小学校入学希望であることを伝達。支援者より相談があり、入学1年 2か月前に母と面談し当センターの支援開始。入学1年1カ月前 に教育委員会が自宅訪問し状況を把握、母より当センターが支援することを教育委員会へ伝達し了承を得た。入学11カ月前に教育委員会・保健師・当センターにて会議を実施。教育委員会内での協議の末、小学校入学決定。それに伴い、教育委員会 ・学校・保健師・当センターにて会議を行い、連携し準備を進めていくことになった。その後、看護師配置や必要物品・書類の確保、体制整備等の課題に対する準備のため、共に特別支援学校や他学校、他地域の教育委員会へ見学や情報収集に行き協議や、関係機関との会議を開催しながら入学準備を進めた。看護師は、対象児が通所している事業所からの派遣の1名と町の直接雇用の1名の計2名の配置となった。また、緊急時対応マニュアル作成や災害備蓄物品の確保などの体制整備を行った。入 学直前には学校看護師向け・全教員向けの実技研修会を開催し、学校全体で支援する体制を整えた。入学後、元気に登校し勉強 を頑張り、お友達や先生と交流を深めている。当センターは、学校訪問や質問への対応等にて支援・連携を継続している。

【考察】

入学準備を進める中で、様々な課題が次々に生じた。 しかし、その都度話し合い、共に先進事例である他学校や他地域の教育委員会から情報収集をすることで対応していった。共通認識を持ち、多職種の視点から情報を得るためには、同行することが大変重要と考える。今後は、地域の中に医療的な視点から助言を行える人材を育成していくことが課題である。また、様々な児童生徒の入学に備え、更なる体制整備が必要である。

【倫理的配慮】

本報告について、保護者へ説明し同意を得た。

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