小児理学療法学
Online ISSN : 2758-6456
発達障害
思春期児童の発達障害の有無における姿勢制御の比較 -動的,静的条件を用いて-
前重 壮寿植田 健稔下地 千織白井 若奈伊藤 詩奈伊藤 香織室下 明子森川 敦子飯田 忠行
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2024 年 2 巻 Supplement_1 号 p. 108

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抄録

【はじめに、目的】

日本では,発達障害と診断された者の数 (推計値)は481千人とされている1)。発達障害児において,運動をはじめとする課題の要求レベルや複雑性が増すと運動計画や協調運動に問題がみられ,学校で困難感や劣等感を感じ自己肯定感が低くなる。そして運動に関連して姿勢制御にも影響している。これらを予防する意味でも,発達障害の有無における姿勢不良,姿勢制御の差を明らかにし,姿勢不良を改善するリハビリテーションのアプローチが重要だと考える。そこで,本研究では,思春期児童の発達障害の有無における姿勢制御について,姿勢分類,理想的姿勢の入力 (イメージ,理解)・出力 (再現),身体測定値と静的・動的 (聴覚・ジャンプ動作)条件で測定した重心動揺解析値をもとに姿勢制御の特徴を明らかにした。

【方法】

対象は,児童発達支援事業所に通う発達障害 (以下,DD)児10名 (平均12.5±0.5歳)および 地域サッカークラブに所属する定型発達 (以下,TD)児37名 (平均13.5±0.5歳)とした。身体的特徴として,身長,体重,BMI,関節弛緩性,四肢周径,握力,膝伸展筋力を測定した。姿勢の入力と出力では,入力は画像から一番良い立位姿勢を選ばせ,出力は姿勢分析器 (高田ベッド)を用いた矢状面の立位姿勢を撮影し,比較した。静的・動的 (聴覚・ジャンプ動作)条件の比較では,重心動揺としてフォー スプレートSS-FP40AOを用いて,開眼 (楽な姿勢,良い姿勢),閉眼 (楽な姿勢),聴覚,ジャンプ動作の5条件で立位姿勢を30 秒間測定した。統計処理は,姿勢の入出力の比較はカイ二乗検 定,身体特徴の比較は一元配置分散分析,Kruskal-Wallis検定, Welch検定を用いた。重心動揺解析値の各条件での群間比較は Kruskal-Wallis検定,群内での各条件間の比較はFriedman検定 を用い,多重比較はBonferroni法を用いた。

【結果】

身体特徴において,DD児群で握力と膝伸展筋力がTD児群より有意に低かった。姿勢の入出力は,DD児とTD児群で有意差はなく,両群ともに約半数は再現において不良姿勢であった。開眼 (良),閉眼,聴覚,ジャンプ動作条件でDD児の重心動揺が有意に大きかった。 両群で開眼 (楽)より閉眼および聴覚条件で重心動揺が有意に大きく,DD児群のみ開眼 (良)条件での重心動揺が有意に大きかった。

【考察】

DD児において理想的姿勢に対する認識はあり,再現ができた。静的・動的立位保持における重心動揺はTD児より大きかった。 DD児の姿勢制御は感覚運動特性による影響があることが示さ れ,今後,学校環境等を考慮した個別支援の介入をおこなっていく必要があると考えられる。

【引用文献】

厚生労働省:平成28年生活のしづらさなどに関する調査結果の概要:P5,平成30年

【倫理的配慮】

本研究は県立広島大学の研究倫理委員会の承認 (承認番号:第19MH054号)を得たものであり,対象児・保護者には研究協力にあたって書面および口頭にて説明を行い,書面での同意を得て行ったものである。

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© 2024 一般社団法人日本小児理学療法学会
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