日本補綴歯科学会雑誌
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有機酸を用いた浸漬試験による銀合金 (JIS第1種) の評価
小池 麻里藤井 弘之
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2001 年 45 巻 2 号 p. 315-321

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抄録

目的: Ag, Sn, Znを主成分とする歯科鋳造用銀合金はしばしばコアあるいは一部被覆冠に使用され, それらの約89%は変色している. しかし, 現在まで乳酸以外の有機酸に対する銀合金の腐食反応を観察した報告は少ない. 本実験の目的は, 唾液やプラークに多く含まれる有機酸および人工唾液中における銀合金の化学的安定性を評価し, 腐食試験などで用いられることが多い生理食塩水中で得られた結果と比較検討することである.
方法: 浸漬試験法を用いて, 成分元素の溶出, 重量変化, 表面色の変化および腐食生成物の組成を分析した.
結果: 全浸漬液で, 銀合金から解離したZnとSnの溶出および不溶性の沈殿物を認めた. Agの溶出はほとんど認められなかった. また, 試料の重量減少と変色を確認した. さらに, 溶出や重量の減少が多い試料のなかに変色が少ない場合があることを観察した. 銀合金は生理食塩水に接触したときよりも乳酸, ギ酸および酢酸などの有機酸に接触したときのほうが腐食しやすいこと, 有機酸の種類によって溶出イオンの動態が異なることがわかった.
結論: 本論文の結果は, 銀合金は口腔内環境のなかで腐食しうることを示している. この腐食の程度は変色だけでは評価すべきではない.

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