抄録
目的: チタンとハイドロキシアパタイト (以後, Ti, HAと略す) の異なる表面性状をもつインプラントについて伝導特性の相違を比較し, オッセオインテグレーションの評価を推定することを目的とした.
方法: ウサギ脛骨に2種類の表面性状のインプラントを埋入した. 10週後に, インパルス打診試験を行い, インパルスハンマーと骨髄内に固定した小型圧力センサーにより, その振動特性と骨髄圧を測定し, インプラント材質間の差異を比較した. また, 組織学的にインプラント周囲骨の状態を検索し, 圧伝導特性との関係を検討した.
結果: 観測されたインパルス継続時間では, HAで163±23μsec, Tiで165±20μsecと有意な差はなかった. 一方, 最大骨髄圧値は, HAで90.3±30.6mmHg, Tiで117.4±54.8mmHgと有意にTiのほうが大きく, また, 偏差もHAに比べTiのほうが大きかった. インパルス継続時間と最大骨髄圧値の間にはTiで負の相関関係が認められたが, HAでは相関が認められなかった. インプラント周囲骨の組織学的検索においては, インプラント間での差異は確認できなかった.
結論: 骨髄圧値の測定から, TiとHAにおける圧伝導性の相違が認められた. 両者の周囲骨の組織像に差は認められず, インプラントの材質による影響が大きいことが示唆された. 評価法を構築していくうえで, 材質の特性の差異を考慮する必要性が示唆された.